当時、直茂公に仕えるなかに徳久という者がいた。
彼は生まれつき変わり者で、どこか抜けたふうに見られがちな人であったという。
あるとき、家に客を招きドジョウのナマスを出したので、
『徳久殿のドジョウナマス』
と、そのころの人々の間で笑い話のタネになっていた。
ある日、徳久殿がお城に出仕したときに事件はおこった。
城中である者が、
例の『ドジョウナマス』を持ち出して徳久殿をからかったところ、
徳久殿がその場で抜き討ちに斬り捨ててしまったのだ。
殿中での抜刀であるから勿論お取り調べとなった。
結果、徳久殿には切腹を申しつけることになったのだが、
調べの一部始終を聞き終えて直茂公は、
『人に馬鹿にされて黙っている者は腰抜けである。
殿中だからといって、見過ごすわけにもいくまい。
そもそも、人を馬鹿にするような者こそがたわけ者である。
馬鹿にした者は斬られ損だ。』
と仰せになられたという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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