戸次道雪が亡くなるしばらく前の出来事である。
ある日、高橋紹運が戦評定のため戸次道雪の陣営に趣き、
評議が終わって酒宴となったころ、どこからとも無く、
真っ白なる鷹が飛んできて、庭前の松の梢に止まった。
近習の若侍たちはこれを見て、
「何としてもあれを捕えよう!」
と立ち騒いだが、どうにも方法が見つからず手を出しかねていた。
これを見ていた道雪は、
「誰か、鷹の事に心得のあるものはいないのか?」
と尋ねると、早良善内という老人が立ち上がり、
厨房の方に走っていくと鳥の肉を一片ばかり取って帰ってきた。
そして庭上に降り立ち、肉を振って静かに鷹を呼ぶ。
と、鷹は肉をめがけて飛び降りてきた。
善内、これを巧みに捕らえ拳に据えて、そのまま道雪の御前に出て、
「これは天晴、逸品の鷹でございます!
そのうえ白鷹といえば、別して賞翫される特別なもの。
これがただいま、庭の松に止まったというのは、
目出度き瑞祥に違いありません!」
そう、大声を響かせた。
道雪はこれを大いに喜び、善内に褒美を与え、そのままその鷹の管理を任せた。
ところが、である。
この鷹はそれから2,3日過ぎて、何の病気も怪我もなかったというのに死んでしまった。
後になって人々は、
『あれは道雪の卒去の前兆であったのだ。』
と、噂し合ったそうである。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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