毛利家に没落させられた尼子家の再興を目指し、
諸国の有力大名を視察する旅に出た山中鹿介は、
近江国番場(現在の滋賀県米原市)に訪れた際、
「自分は出雲の浪人である。」
とだけ告げてさる老僧の世話になっていた。
ある日、10数人の無頼漢達が
「何か食べ物を寄こせ!」
と庵に立ち入ってくると、鹿介は、
「邪魔だ、さっさと出て行け!」
と一喝。
その上で、彼らが強盗で、再びこの庵を襲撃してくるだろうと考え、
罠を仕掛けておいた。
その夜、案の定、強盗達が押し入って来た為、
罠を駆使して全員を生け捕りにしたものの、
仏前での殺生をためらい、老僧と相談して逃がしてやる事に決めた。
すると、強盗の頭目が、
「貴方様は、只者ではないでしょう。
何か大望を思い立たれた時に馳せ参じたいので、
名前を教えて頂きたい。」
と願い出ると、鹿介は、
「何を言ってる。庵の食客が何を思い立つというのだ。」
とはぐらかしたが、この一件が噂になるにつれ、
自分の正体が明らかになると面倒だと考え、
鹿介は庵を立ち去ったという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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