北条氏政の家臣に、安藤豊前守良整という能吏がいた。
彼は主に出納関係を担当していたが、
ある日、伊豆の漁村へ書状を送った。
同じ浦の漁村が、
課役逃れのために虚偽の百姓逃散を申し立てていたことが判明し、
その処分を浦々に告知する内容だった。
良整は、書状の中でこんな感慨を書き綴っていた。
「もし、夜逃げした者が村に戻ってきたら、
二度と欠落など考えぬよう言い聞かせよ。
当世、どこへ行ったとて、人の主になどなれぬ世間になってしまったのだ。
その侍といっても、やがては草鞋取りとなり、
裸足で使い走りさせられる時代がくるだろう。
思慮のない行動はよくない。
やはり、百姓として精一杯働くことが賢明なのではないか。」
書かれたのは天正元年、天下統一のなる18年ほども前のことだった。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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