北条氏政の下に、都より勅旨が参られた時の事。
氏政は小よろぎの磯という所で、月見の宴を催した。
ここで歌合せが行われたのだが、氏政は最初の句として、
『秋もなかば 我身もなかば こよろぎの いそがぬ年の いかでたつらん』
氏政はこの時三十歳。
六十を一期として、「我が身も半ばとなった。」と詠んだのである。
この見事な歌に勅旨は感じ入り、
「今夜は、この上の詠歌はいらないでしょう。」
と、
その夜は、この一首のみの宴となった。
やがて勅旨が京に帰ると、その歌は勅旨の口から叡聞に達し、
叡感の余り御薫物五香を氏政に下された、ということである。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
こちらもよろしく

ごきげんよう!