北条氏綱の嫡男、後の氏康がまだ元服前の出来事。
氏康が習い初めの年齢を迎え、
氏綱は家臣一同にまず何を習わせるべきか問うた。
これに、家老・松田左馬助が進み出、
「算術がよろしいでしょう。」
と答えた。
若い家臣達、一様に嘲るような笑みを浮かべた。
少年期の氏康、
鉄砲の逸話もあるように臆病者と侮られていた節がある。
武勇第一の若侍にすれば、確かに算術あたりがお似合い、
と思ったのだろう。
が、氏綱は怒り、彼らを大喝した。
「心得違いをするな!
大将というものは、兵を動かすにも兵糧を見積もるにも、
算用算術がなくてはならん。
老臣の左馬助はそれをよく知っているから、
ああ申したのだ。
若輩がそれを笑うとは何事か。」
そう言って、氏綱はまず氏康に算術を学ばせた。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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