慶長の頃、最上義光の近習に、白鳥小三次といった美童がいた。
武の最上家にあって刀槍の腕はそれほど定かではなかったが、
義光からは数百石の知行を受け寵愛されていた。
ある日、白鳥を嫉(やっかん)だ某(なにがし)といった家来が義光に問い質した。
某、
「小三次は新参の若輩でありながら高い知行を得ているのには、
なにか理由があるのでしょうか?
大崎や蘆名は衆道で傾国し、家を滅ぼす原因にもなっています。
まさか殿に限ってとは思いたくありませんが、よければ理由を教えてください。」
最上義光、
「それはまったくの誤解である。
たしかに小三次は見目好い若者であるが、
あれは若いながらに学習意欲があり、文や歌にも長じるところがある。
また他の小姓の者よりも懸命に働き、
困っている者あらばこれを扶ける所も見ている。
武の腕はたしかにそなたに劣ろうが、
秀でるところがあるから目を掛け重きをなしているのだ。
小三次の仕事をそちが代わってみるか?」
この話をされて某は、
「つまらぬ考えから恥ずかしい所を見せてしまいました。」
と自らの告げ口を恥じたという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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