天正十三(一五八五)年二月、
草刈将監という男の屋敷に、
戸部三郎左衛門と田村助左衛門という男がやってきた。
草苅将監は前年、最上義光によって出羽を追われた天童家臣である。
「どうも! はじめまして。おれたち義光の奴に仕えていたけど、
奴、けちくさくてやってられんのです。
草苅様が義光討伐計画中って聞いて、馳せ参じたんですわ。」
「それはいい! じゃあ早速計画でもしましょう。」
こうして将監は喜び、二人ともに夜通し語り明かした。
と、将監が寝入った夜半…二人はごそごそと起き出し、
おもむろに将監の切り離してそのまま逐電してしまった。
山形で将監の首を受けとった義光はニヤリとつぶやく。
「計算通り。」
実は義光、天童を滅ぼす際に天童頼澄は討たぬと、寝返った延沢満延に約定していた。
だが、重臣の草苅はカテゴリ違いとばかりに、
逃亡した将監を油断させて謀殺したわけである。
最上義光は鮭だけではなく謀略も好んで喰っていたんですよという悪い話で。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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