最上義光が、八ツ沼城を攻めた折り、
地の利の不案内と急ないくさの準備不足もあり、
緒戦で八ツ沼城の幾志美作(貴志美作)の精兵150に、
山形兵500が不意を突かれ四度路(しどろ、木っ端みじん)に崩されかけた。
先手にいた義光は、少しも引かず、
「いひ甲斐なき者哉(だらしない)、付入にせよ(者共突っ込め)、
返せ返せ(引くな引くな)。」
と命令したが、貴志勢に向かってとって返し戦う者は少なく、
義光の馬廻や旗本も疎らに(少なく)なってしまった。
その時、八ツ沼の勇士・飯沼源八が、義光を討つ好機と見て、
大薙刀を打ち振り、義光目掛けて馬を走らせて来た。
義光はにっこりと打ち笑い、
「剛の者よくぞ懸かって来られた。」
と愛用の鉄砕棒を構えると、真っ向微塵に撲り倒した。
義光の近習の山辺六郎が義光が撃ち倒した源八の首級を掻き落とすと、
義光は鉄棒に首を刺して、
「おん敵討ち取ったり。」
と雄叫びを挙げた。
この勢いに畏れをなした貴志勢は、動揺を隠せない様でだったが、
そこに氏江尾張(氏家守棟)なる老将が20~30騎ばかりの兵を急ぎ寄せた。
義光をはたと睨みつけ、
「このクソたわけ!大将自らが進んで雑兵と斬り結ぶとは何事哉!」
と泪ながらに訴えたという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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