天正12(1584)年、
最上義光は寒河江の大江尭元と親交の深かった、
谷地城主の白鳥長久を山形城に滅殺した。
義光のこの行いを知った大江氏は、難を逃れた谷地旧臣を保護。
最上氏と大江氏の仲は、一触即発の険悪なものとなった。
義光は寒河江攻めを決意し、
密かに大江一族の有力者である、
寒河江肥前(寒河江広俊)や寒河江外記(寒河江光俊)を懐柔した。
寒河江城には、城主大江尭元の弟で、
周囲に豪力を知られた羽柴勘十郎(大江頼綱)があった。
最上義光、「…(なんとしても欲しい人材だな…。)」
義光は、羽柴勘十郎方に便りをしたためた。
義光、
「白鳥長久の手打ちの件は最上家としては羽州探題の名誉を守り、
出羽の安寧を守らんがためのやむを得ない事でした。
我等(最上・大江)に行き違いがあっては由々しき事態ですので、
軍(いくさ)をせずに仲良くしませんか?」
羽柴勘十郎、「…。」
義光、
「…それと、もし宜しければ最上家にいらっしゃいませんか?
今のままでは勘十郎さまは在地に埋もれてしまい、
その素質が活かされないのは、天も嘆くくらい非常にもったいない事です。
最上軍に来て頂けるのなら、
寒河江と谷地をお任せしたいのですが、いかがでしょう?」
勘十郎、「…ピキピキ…兄じゃを裏切れってか?」
志村光安、「…で、無謀だと思いましたが、羽柴からの返事はどうでした?」
義光、「息子の嫁の父(長久)を殺しておいてまったく反省の色の見えない、
最上義光といった野郎の首級をくれたら考えてやらんでもない、と。」
氏家守棟、「…でしょうな。」
力こそパワー大好きな鮭様の、
やっちゃった系の引き抜き失敗のお話。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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