振分髪☆ | げむおた街道をゆく

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北国の雄、伊達政宗がある日江戸城本丸に登城した時、

同席した藤堂高虎が政宗に向かって、
「あなたの帯びている短刀は、やはり正宗の作でしょうか。」
と尋ねた。

 

政宗は、
「その通りです。」
と答えたが、その日帰邸すると、直ぐ重臣を呼んだ。

「今日、殿中において私が帯びている短刀を『正宗でござるか?』と聞かれたので、
そうでないとも言えず、『仰せの通り』と返事をしたが、

実はお前たちも知っての通り、
我家に正宗の脇差は無い。

しかしこのように大国を領する私の持ち物として、

人々は脇差も正宗と思っているものらしい。

今後、もし『拝見を』などと言われては、赤面せねばならぬ。

それで、私は秘蔵の正宗の刀を脇差に直そうと思う。

早速鍛冶の者を呼び寄せてもらいたい。」

そう命じ、呼び出された鍛冶の者は、改めて政宗からその言いつけを聞くと、

「正宗の御刀は天下に数の定まったものでございます。

むざとお切り捨てを遊ばすのは勿体無いことと存じます。」

そう言って嘆き止めた。

 

同時に家臣の者達も様々に諌めたが、政宗は承知しない。
そこで余儀なく、鍛冶の者も拝承して刀を脇差に直した。

そしてその脇差に「振分髪」という銘を入れて差し出した。

政宗はその銘を見ると、「これはどういう意味か」と尋ねた。
 

鍛冶の者が答えて、

「在原朝臣(業平)の歌にある,

『くらべこし振り分け髪も肩すぎぬ君ならずして誰かあぐべき』 
(長さくらべしていたわたしの振り分け髪も肩から下がるほどになりました。

あなたのために髪を上げましょう)
という歌の意味でございます。」

そう答えたので、政宗はじめ人々、優にやさしいその心にいたく感じ、

その後、「振分髪」の脇差と云い、伊達家の名器として尊ばれた。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。

 

 

 

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