寛永5(1628)年7月14日、
江戸城において能があり、諸大名が見物していた。
その時、大地震が起こり、驚いて能舞台の周りの白洲に降りてしまう人が多かった。
森忠政は、嫡男の忠広と共に座っていたが、
向かいにいた忠広がすぐに(逃げようと)立ち上がろうとしたのに気づくと、
忠広を思い切り睨みつけたので、忠広は立ち上がれなかった。
忠政の隣に座っていた堀尾忠晴も立ち上がったが、
忠政が袴の合引をつかみ座らせた。
伊達政宗は(逃げようと)端まで出てしまっていたが、
忠政父子が(揺れていても)座っているのを見て、
「御前が近いのに大騒ぎではないか、最早揺れも鎮まったのでみな席に戻られよ。」
と差していた扇を開き、白洲に降りた人を取り鎮め自らも席についた。
翌日、堀尾は森家に来て忠政に、
「昨日の御心付けは、生生世世忘れがたいことです。」
と礼を言ったという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
こちらもよろしく

ごきげんよう!