すっかり徳川の世の中になった元和七年の事。
江戸の伊達屋敷でぼや騒ぎがあって、
物置程度のほんの一部が焼けた。
普通だったらそこだけ直しそうなものだが、やはり政宗、
「せっかくだから全面改装しちまおうぜ。どーんと派手にさ。」
と、いいだした。
真面目な老臣達は当然、
「殿、そんな無駄遣いは駄目ですぞ。
そもそも武士たるものは戦に備えて質実剛健に……。」
とやり始めるのだが、政宗は笑いながら、
「お前ら、今は天下太平だぞ?戦備えなんか古い古い。
なんかあったら将軍様から借りりゃいいのよ。」
そんなわけで伊達屋敷は新たに立て直しということになった。
昔のケチケチしていた政宗とはえらい違いである。
しかし、平和になって武士も腑抜けたと見るようでは考えが浅い。
伊達屋敷ともなれば将軍だって遊びにくるだろうし、
こっそり蓄財して幕府に勘ぐられたらかえって面倒になる。
金の意味は時代で変わる。
ぱぁーっと使ってみせるのも立派な戦術なのだ。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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