徳川秀忠の上杉景勝邸御成り。
この御成りの際、秀忠の随身として一緒にやってきたのが、
藤堂高虎、医師の施薬院宗伯、そして伊達政宗であった。
上杉景勝とは関ヶ原の際、直接争った政宗。
流石に秀忠の面前で問題を起こすような景勝ではあるまいが、
何となく面白くない気分で上杉家上屋敷に到着した。
が、何か様子がおかしい。
同行した藤堂家や伊達家の家臣、秀忠の御付の者達までもが、
何故か政宗の方をチラチラと窺っている。
「……なんだ、一体?」
首を傾げながらも門を潜ると、
「んぁぁぁぁぁっ!?厩に張られたあの幕はっ!!」
そう、かつて二人が争った関ヶ原の合戦の際、
福島方面に攻め込んだ伊達政宗、
上杉家の将、須田長義に散々に追いまくられ、本陣の旗やら陣幕やら、
ごっそりと奪い取られてしまうという苦い経験を持っていた。
その時の陣幕、伊達家に於いて先祖代々伝わる由緒正しき陣幕が、
あろうことか厩に張り巡らされていたのである。
「ぬ、ぬぐぐぐぐぐぐぐぐぅ………」
怒り狂い、屈辱に歯を噛み締める政宗。
彼等に同行した施薬院宗伯は、
「政宗公は赤面し、随分と迷惑そうになさっておられた。
その様子は見ているコチラが気の毒に感じるホドだった。」
と周囲に語ったと言う。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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