あるとき、政宗が留守の間に、
小姓たちが暇をもてあまして、畳の上で相撲をとり始めた。
勝負は白熱し、みんな熱中しすぎて周りのことなど気にもしなかった。
一人の小姓がうっちゃられた先には、
秀吉が政宗に下賜した利休作の竹の花入があったのである。
哀れにも花入は修復不可能なほどひしゃげてしまった。
政宗はさぞかし立腹したのかと思いきや、
「次は周りに気をつけて相撲をとるように。」
の一言で済ませてしまった。
後日、秀吉から、
「あの花入はどうした?」
と聞かれたが、
政宗は意外にも正直に顛末を話して花入を壊してしまったことを詫びた。
秀吉は、
「さても人の命には代えられぬものかな。」
と大笑いし、以後、その花入を『大投げ』と名付けて大事に使えと命じた。
政宗が正直に話したことも意外なら、秀吉が寛大に許したことも意外である。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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