伊達政宗が本願寺の門跡より会食に招待された事があった。
その後、能の興行が行われた。
政宗、その番組(演目表)を見て、
「杜若(かきつばた:能の演目の一つ)をやるのか!よし、ここの鼓はわしが打とう!」
座の人々、一斉に眉をひそめた。
『杜若なんて超難しい曲目じゃないか。プロでも大変なのに大名が打てる訳無いだろ!
あーあ、せっかくの能興行がぶち壊しだ。』
が、あにはからんや、政宗の鼓は見事であった。
物語の序破急節を、見事に表現した。
曲が終わって門跡、感に堪えたように、
「政宗公は鼓の名手であられますな!」
と、声をかけると、政宗、
「杜若に限らず、(難解な曲と言われる)獅子や姥捨の秘曲でも、
打つ自信はありますよ?
まあ、そこいらの並みの能楽師じゃ、わたしの足元にも及びませんよ。」
門跡に向って自画自賛。
このあたりいかにも政宗らしい。
が、
「…ですがね、ふと思い出しましたが、細川幽斎なんて人は、鼓に限らず、
もう、いろんなものの名人でした。
ですが、その事を一生自慢しなかったそうです。
わたしがこんな大口を叩くのは、人柄も鼓も、細川幽際に及ばないからだ。
ま、そんな風に思ってください。」
案外謙虚な政宗公なのであった。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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