伊達政宗が鷹狩りに出かけたある時、その途中で芝の上に寝転がり、
よほど気持ちが良かったのか、そのまま昼寝を始めた事があった。
政宗、スヤスヤと寝入ったが、この時俄かに雨が降り出す。
付き従っていた近習が、政宗を起こした。
「殿、雨が降り出しました。目をお覚まし下さい。」
が、気持ちよく寝入ったところを起こされた事は、独眼竜の逆鱗に触れた。
「誰が起こせといった!」
政宗、傍に置いた刀を抜くと、刃をその近習に向けた!
寝起きの独眼竜の目は本気だ。
近習、逃げる。
が、逃げられれば政宗も当然追いかける。
そのまま2,30間(4~50メートル)ほども、
抜き身の刀を振り回しながら追いかけた。
これが、政宗に雨が降りかかる事を心配した、
その結果の出来事なのだ。
近習、逃げているうちに、流石にその馬鹿馬鹿しさに気がついた。
はた、とその足を止める。
そしてくるりと振返ると、そのまま政宗の前につかつかと歩み寄り、
「君臣の礼もこれまででござる!さあ!お手に懸けられよ!」
と、その場に胡坐をかいた。
『もう勝手にしろ!殺すなら殺せ!』
というわけだ。
おそらく途中から追いかけることが面白くなっていた政宗、
こう言う態度に出られて、ふと冷静に戻ってしまった。
しかし振り上げたこの刀、さて、どう治めたものか?
そうだ!
「何を勘違いしておる!?」
政宗、近習を叱り付けた。
「わしはお前を斬ろうとして追いかけたわけではない!」
「ええっ!?」あんた、殺る気満々だったじゃないか!?
近習が吃驚した顔を向けると、
政宗、
「わしは、お前がわしを起こしてくれた褒美に、
この刀を与えてやろうと思って、追いかけたのだ。
それをわしが殺そうとしたように取るなどとは、
まったく、ひどい思い違いだ。」
と、抜き身の刀を投げ出して、その近習に与えた、とのことである。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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