伊達政宗は鷹狩が好きで、家臣を引き連れての鷹狩を、
度々楽しんだと言う。
ある時のこと。
政宗の狩りの行列の前を、老婆を背負った百姓が横切った。
大名の行列を横切ること、これは例え狩りのものであっても、
重大な罪である。
「無礼者!」
政宗の家来たちは刀を抜いてその百姓に迫った。
百姓は青ざめて土下座をし、
「母親が急な病で苦しみだし、
急いで医者のところに連れて行く最中だったのです。
お殿様の行列とは知らずに横切ってしまいました。
どうかお許しください。」
政宗はこれを聞いて、
「よいよい、許してやるのだ。
親と言うものは一度なくしてしまえば二度と持つことが出来ない。
さあ、早く医者に連れていけ。」
そう言って百姓を逃がしてやり、さらにその後で、
親孝行の見本であると褒美まで下した。
さてさて、とある怠け者の百姓が、これを聞いて思い立った。
「俺もその真似をしてご褒美をもらおう!」
この怠け者は、病気でも何でもない母親を無理矢理に背負うと、
政宗の狩りの行列の前を横切った。
「無礼者!」
家来たちがまたも刀を抜いて迫る。
ここまでは計算通り。
が、この怠け者、刀が怖くて口を開くことができなくなってしまった。
今にも叩き斬られそうにな息子に、慌てた母親が叫ぶ。
「このバカを育てた母は私です!
どうかこのバカの代わりに、こいつをこのように育てた、
私を斬ってください!」
政宗これを聞いて、
「よしよし、許してやるのだ。
それからそこの若いの、
よいか、いつまでもあると思うな親と金。
真似事でも良いから、親が生きているうちに孝行をして大切にせよ。」
そういって逃がしてやった。
怠け者はこれに恐れ入り、それからは真面目に働くようになったのだとか。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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