天正十五年の本庄繁長による庄内の尾鐺攻めの時の事について、
本庄は夏目舎人助に物語された。
「尾鐺において攻め合いの際、最上方である上山田がこちらに内通し、
堅く申し合わせたが、必ずしもこれを頼りにしなかった。
戦国の最中では、こういった軍略は敵味方ともにあるものだ。
『我を欺くべし』と深く企む心根は、不明の智では知り難い。
世間の約束などは、手のひらを翻すようなものであり、
思い定めた志でさえ変わることもあるのだから。
上山田が内通を悔いて、取りやめる可能性もありえる。
しかしそういった事を疑っていては、
出勢することも合戦することも出来なくなってしまう。
こういう所をよく思案し、予定通り上山田が裏切れば、
勝利は手中にしたようなものであるが、
万一これが、上山田が越後勢を討つための詭計であったならば、
これこれの武略を以て変を打ち、
それに勝つための備えを定め、五段三段と工夫して、不敗の地をふまえ、
必勝の旗を掲げる。
これこそが誠に、危うからざる戦法である。」
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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