島津氏が、薩摩・大隅・日向三州統一に向けて諸大名と対峙していたころ、
新納武蔵守忠元は、菱刈氏攻略を命じられ、薩摩大口の地頭として赴任した。
菱刈氏との戦に向かう前、忠元は戦勝祈願のため、薬師堂に参詣した。
ところが、
「ご、ご注進!相良頼房(義陽)が、こちらに攻めてまいります!」
「なんじゃと!?菱刈と相良が、示し合わせておったか!」
「ここは仏閣、しかも我らは祈願祭事の最中だぞ? 相良め、卑怯な!」
「ともかく、忠元どのにお知らせせよ。」
そのころ忠元は、薬師堂の窓のさんに登り、壁の上の方に祈願書など書きつけていた。
「忠元どの、一大事じゃ! 相良が寄せて来る。早う出て指揮してくだされ!」
「・・・・・・」「どうした忠元どの! 相良の奇襲じゃ、事は一刻を争うぞ!?」
「・・・・・・」「た、忠元どの?」
「・・・・・・これ書き終わったら、本気出す。」
島津軍が出た時には、相良軍は薬師堂の前に陣を構えており、
一人の武者が飛び出してきた。
「我こそは八代の住人、的場五藤! いざ尋常に勝負!」
忠元、
「やかましか!」
的場を倒した忠元は、相良陣に矢文を射掛けた。
矢文には和歌が一首書かれていた。
“無用かな 人の弓矢に より房の 首をごう木に 下がらして(相良して)見む”
忠元の剣幕に恐れをなした相良軍は、早々に陣を引き払った。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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