家康の屋敷にて☆ | げむおた街道をゆく

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蒲生氏郷が、徳川家康の屋敷に遊んだことがあった。

だが、家康、氏郷を接待するための指示を家臣にろくに出さずにくずくずしている。
目から鼻へ抜けるような秀才の氏郷には、これがどうにも不快であったようだ。
もっとテキパキしろよ!と。

ところが接待役の牧野半兵衛は、氏郷が「茶がほしい。」と思った時には茶を持って来、
「菓子がほしい。」と思った時には菓子を持って来る、と言った具合に、

氏郷の意に沿わぬことは、何も無かった。
氏郷はこれを不思議に思い、半兵衛に問いただすと、

家康が持ってくるように命じたからだ、と言う。

 

しかし、家康は指示などしていなかった。

 

「いつそのように言われたのだ?」

「わたくしは殿に長く仕えておりますゆえ、殿の御意がどこにあるか、

未形未声に、見聞きできるようになりました。

でありますから、殿が命じたと申したのです。」

これを聞いて氏郷、家康のほうに振り向いて、

「あなたは要らぬことには鈍くさいが、要ることには賢き人ですな。」

と、言ったそうである。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。 

 

 

 

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