蒲生氏郷が豊臣秀吉により、伊勢国松島十二万石を拝領した頃、
彼への奉公を望んで来た者たちの中に、松田金七という者があった。
彼は元は大和国の侍で、生来武勇の者であったが、
ある年、南砺(奈良)に牢人して居た時、
仔細のことあって町人たちと口論に及び、
大勢の中に取り籠められ、その内の一人が持っていた棒に当たった。
これは武士にとって非常に屈辱的なことであり、
「是非とも死なねば!」と叫んで、
自ら死のうとしたのを、
周りの人々が無理に押し止めたため諦めて恥を忍んだ。
しかし以降、松田は自分の具足を威して、
背中に金箔で『天下一の比気者(卑怯者)』と書きつけた。
そしてこの度、蒲生氏郷の元に参り、
河井金左衛門を頼んで奉公を望んだが、
「私は天下一の比気者ですが、御用に立つことも有ると思います。
お目利き次第にて、御扶持を申し請けたく思います。」
そう申し上げた。
氏郷は彼の正直に感服し、「只者ではない」と、
彼に過分の知行を与え、鉄砲隊を預けた。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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