ある時、蒲生氏郷が伏見の前田利家の屋敷を訪ねた時、
蒲生家と前田家は、
もとより縁辺であるので(利家の次男・利政の妻が氏郷の娘)、
供の侍たちは蒲生家、前田家共に座敷に入るのであるが、
その時は蒲生家の侍たちは、座敷には入らなかった。
ところが、氏郷の小姓である岡半七という者、
これを知らずいつものように番所の戸を開けて、座敷に入ろうとした所、
傍輩が一人も居ないことに気が付き、驚いて座敷の戸を閉めて退出した。
この姿を番所に居た者たちが小声で笑った。
その瞬間、岡半七は太刀の柄に手をかけた
「汝ら何を笑うのか!?」
声高に過ぎたその声を氏郷は聞き付け、
「また半七めか。いつもの大声だな。」と、
つるつると座を立ち半七を呼んで、特に用があったわけでは無かったが、
当座の事について長岡越中守(細川忠興)への使いに出した。
これによって喧嘩を止めたのである。
このように氏郷は、物事に分別のある人であった。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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