伝来の鎧☆ | げむおた街道をゆく

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蒲生氏郷の元に、あの佐々木高綱の物だと言う、名高き鎧があった。
ある時、細川忠興がその事を知り、氏郷に言った。

「くれ。それ、俺に。」

この事を聞いた蒲生家家臣・亘理右衛門は、大いに驚きあきれた。

誰が考えたって、蒲生家の重宝である鎧を無心する忠興も忠興だが、

氏郷もお大名の権化みたいな性格である。
くれと言われた物は、渡さずにはいられないだろう。
それはある意味美点なのであろうが、しかしこの鎧ばかりは…。

右衛門、氏郷に釘を刺した。
「殿、これは代々御家に伝わる宝であります!

どなたにも差し上げるわけには行きませんよ!」

「え?もう忠興に上げるって言っちゃったよ?」

遅かった。

しかし右衛門、これもまだ想定内だとばかりに、
「で、では細川様には、似たような鎧を贈りましょう。

なあに、違いなんかわかりはしませんよ。」

これなら双方丸く収まる。これで解決だ。
ところがそう思わない人がいた。

もちろん氏郷である。

「右衛門、古歌にも、こうあるではないか

『なき名ぞと 人には言いて ありぬべし 心の問はば いかが答えむ』
(身に覚えの無いことであると、人に言ってごまかしていても、自分の心に問えば、どう答えると言うのか)

そんなごまかしをすれば、この詩の意に恥ずかしいだろう?」

そういってその鎧を、忠興に贈ったそうである。

蒲生氏郷は、困るほど正直なのだ。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。 

 

 

 

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