若年より、儒仏両道に歌道、茶道を学び、どの道においても、
才能を発揮してまわりの者たちにいたく感心されていた氏郷。
誉められればやる気も湧くのだろう、儒道や歌道、茶の湯にばかり心を入れて、
日々を過ごしていた。
そんなある日、弓矢の修練に打ち込む侍、斉藤内蔵之助と会ったところ、
「役にも立たない事に一所懸命になってどうする?
武士の本分である武芸兵法に心を入れて打ち込むべきだ。」
と言い、その後も会うたびに同じことを意見してくる。
だが、まだ若かった氏郷。
それを耳にもとめずに日々を過ごしていた。
日は流れて、
氏郷が織田信長の観音寺城攻めに参加していたところ武士がひとり駆けつけてきた。
それは例の斉藤内蔵之助で、氏郷に言う。
「今日の先手は伊賀衆らしいが、俺がみたところ、
軍のかけ方、足軽の使い方がよくない。
おそらく伊賀衆は準備不足か、連戦の疲れで態勢が整っていないのだろうから、
敵に攻められたなら敗れるのは間違いない。
だから、其の方の軍勢を西の山の竹藪に隠し、
先手の伊賀衆が崩れたならば、
伊賀衆を追いかける敵の軍勢が過ぎたところに割って入れば、
勝利を得ることが出来るだろう。
そうしてから伊賀衆に、今朝から戦いつづけてお疲れでしょう。
我らが入れ替わるので後はまかせてくだされ。
と断りをいれてからシンガリをやったならばそれこそ高名というものだ。」
と教えてきたので、氏郷はその教えどおりに軍を動かしたところ、
内蔵之助の言ったとうりになった。
そして氏郷は三十人もの首を打ち取り、
信長に大いに感心されて、国俊の腰の物を拝領した。
それからの氏郷は斉藤内蔵之助が言うように武士の本分に一所懸命打ち込み、
天下に名を轟かしていくことになるのである。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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