サイカチの木☆ | げむおた街道をゆく

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土井大膳は、元は北条氏の被官であったが、北条氏に背き長野業正の客将となった。

 

長野氏と武田氏は長年の抗争状態にあったが、

ある戦で長野氏が武田氏に負けて、退却することになった。
殿軍は、土井大膳と赤石豊前の2人が務めることとなった。

ところが、運のないことに赤石の旗指物が、

さいかちの木にひっかかって取れなくなった。

馬上から手を伸ばしても取ることはできない。
「お~い大膳。旗指物が取れなくなった。旗指物を捨てて帰るのは末代までの恥。
何としても取り返したいので助けてくれ。」

 

大膳は、

「よっしゃ、心得た。とにかく貴様も馬から降りろ。

その木を切って旗指物を取り戻そう。」

と言って馬から飛び降り、

先に退却した殿軍のいる箕輪城の方向に2頭の裸馬を走らせた。
 

二人は刀を抜いて、

「えっさほいさ。」

とさいかちの大木を切り始めた。

 

そして、やっとこささいかちの木を伐り、大木は道をふさぐ形で「どうっ」と倒れた。

豊前が、倒れた木から旗指物を取り戻している間に、武田軍の追っ手がやってきた。

 

「武田の侍は多勢。こちらはたった2人じゃ。存分に働いて討ち死にせん!」
と死を覚悟したころに、先ほど引き揚げた殿軍の一部の10名が、

2人の元に引き返してきた。

 

聞けば、大膳と豊前の裸馬だけが追い付いてきたので、

「さては大膳と豊前は討ち死にしたか。心配だから様子を見に行こう。」

ということで引き返してきた、とのことである。

 

そして、「われも俺も。」ということで、

続々引き返してきて総勢100人余りになった。

武田軍は大膳らを打ち取ろうとするも、

さいかちの大木が道をふさいでおりしてなかなか先には進めない。

さりとて、さいかちにはびっしりとトゲが生えており、

乗り越えていくこともできない。

 

大膳と豊前はさいかちを盾にして、

「ござんなれ!」

陣を組み、両軍はこう着状態となりやがて日が暮れ始めた。

 

とうとう武田軍の追っ手は追跡をあきらめて引き上げ、

大膳と豊前は無事に箕輪城に帰還した。

業正は二人に対して、
「敵を我が城に寄せ付けず、途中で踏みとどまった大膳と豊前の働きは、莫大な功である。」
として大いに褒めたという。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。

 

 

 

こちらもよろしく

→ 上州の黄斑・長野業正、目次

 
 

 

 

 

 

ごきげんよう!