箱根大権現の化身☆ | げむおた街道をゆく

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長尾為景の次男とは、後に長尾弾正少弼景虎。

後年、剃髪して権大僧都謙信と呼ばれた人物である。
 

享禄三年に誕生され、童名を猿松丸と言った。

しかしながら幼年の頃、戯翫に異様であるのを好み、長するに及んで膽気剛腹にして、

老臣の諫言を用いず、その行跡は尋常の人ではなかった。
故に老臣たちは彼を悪み、疎み捨てたという。

異説に曰く、為景の内室が不思議な夢を見た。

その夢は、年齢二十歳ばかりの客僧が、内室の枕上に立って、
このように言った。
 

「私にしばらくの間、その方の胎内を貸されよ。」

内室は夢の中で返答した、

「たしかに客僧の仰せに任せ、私の胎内をお貸しするのは安きこととは言え、
夫の下知を受けなければ叶い難いものです。」

「さあらば、為景に語られよ。為景同心に於いては重ねて来るべし。」

その言葉も言い終わらぬ内に、夢はたちまち覚めた。

早朝に起きて、内室はこの夢の模様を為景に語った。

為景は夢の様子を詳しく聞かれ、

「これはただ事ではない。

天の加護によって、英雄の男子を授与され給うと覚えたり。
重ねて夢の中に彼の人が来れば同心するように。」
と、心に祝い、重々に沙汰された。

その夜、また内室の夢ともなく現ともなく、先夜の僧が来て枕に立ち寄り、
「過ぎし夜に約した事、為景に語られたか。」
と尋ねられると、内室は返答に、
「夫に語り聞かせた所、いと安き御事であると言われました。

ところで御僧は何方より来られたのでしょうか」
そう問うと、僧は打ち笑って、

「私は伊豆箱根の者である。」

と言い終わらぬ内に、内室の左の懐中に入ると感じ、たちまち夢は覚めた。
それより程なく懐妊あり、享禄三年、男子が誕生した。

 

これが即ち景虎である。
 

この事は世間にあまねく隠れなく、世間では彼が箱根大権現の化身であると、
語り合ったという。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。

 

 

 

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