奥近習六人衆☆ | げむおた街道をゆく

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武田信玄公は人を試みるのに、

まず甲州の中での河川改修、普請、その他鷹狩などにおいて、
在郷の山に、竹木大小の有るのをよく覚えられていて、

それを知られないよう、人々に尋ねられた。
そして人々の中から詳しく見憶えていて申し上げる者には、

「その場所を度々見たのか?それとも私の供をした時だけで見憶えたのか?」

そう重ねて尋ねた。

そのような事が幾度も重なった上でも詳しく説明の出来る人物を、

信玄公は他国への検使に遣わし、国境の模様などを観察させた。

或いは、信玄公はくどく物をお尋ねに成り、

その人の心を汲み取ろうとするのが常の儀であった。
その様子は、例えば御前衆の親に患いなどあれば、

その者に煩いの様子を詳しく尋ね、

その者が親に、孝不孝のどういう感情を持っているかを知ろうとされたが、

人々はそれを知らないので、
「信玄公の癖で一つのことを何度もお尋ねになる。」

と話したりしていたが、それは僻事である。
我らも、よくよく思案、工夫して信玄公の儀に至るべきなのだ。

古人に曰く、

『金は火を以って試し、人は言葉を以って試す。』

というではないか。

信玄公はこのように試みて、又その上側近くに置いた近習の内、

無二無三に御屋形様の御用に立つだろうと、
思われる若者を6人選び出し、彼らの発言を聞こうと考えられ、

彼らから、諸人、または他国より来た新参衆の手柄の虚実について聞き、

「或いは、手柄が在っても嘘を常に申す者か、

朋輩で良く近づくものに頼もしさの無い者か、
大身衆にばかり慇懃で、諸朋輩に慮外な人間か、

酒を過ごして酔狂をするひとか、総じて諸人に腹を立てぬようにする人か、

武具には万事嗜みのない人か、分限にて諸道具をよく嗜んでも、
弓矢に心を入れない武道への心がけのない人か、一切の善悪を言え。」

と仰せに成った。

この6人は、

曽根孫次郎、金丸平八郎、三枝勘解由左衛門、真田源五郎、

三枝新十郎、曽根与一の助の事である。

この内、金丸平八郎は土屋右衛門と、真田源五郎は武藤喜兵衛と呼ばれていたが、

これは勝頼公の時代、長篠合戦において彼らの兄が討ち死にしたため、

その後を継いで名が変わったのである。
真田は、この頃は真田安房守と申している。

曽根孫次郎は内匠と称している。
三枝勘解由左衛門は長篠で討ち死にした。

彼らはいずれも、弓矢鍛錬は覚えの武士にも劣らぬ人々であるが、

それは信玄公のおそば近くで召し使われ、
よろずその御発言を承り、覚えた故である。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。

 

 

 

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→ 甲斐の虎・武田信玄、目次

 

 

 

 

 

 

 

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