ある時、武田信玄は、このように言った。
「人はただ、学ぶべきである。
学ぶと言っても読物ばかりではない。
何事であっても習うことにより、学ぶというのだ。
殊更、弓矢の家に生まれた者は、心がけて一日一つ良き事を聞けば、十日には十聴き習い、
工夫分別して物の理に徹するならば、一文不通の人であっても、智者と呼ばれるであろう。
今川氏真は、我が婿であり、北条氏政はまさしく氏康の子である。
何れも物をよく書き、よく読み、短冊色紙に詩歌を記し、自作の文章もよくこなす。
しかし彼らは、当年既に二十五にして、弓矢のこと、武義の備えについて、
何であっても人の口に上る程度の話もないのは、最も文盲な者にも劣るといえる。
こういうことから考えるに、人々は学びというものに心得違いがあり、
学ぶべきことを学ばず、要らぬことを熱心に成し、
結果、家を失うに至るわけで、
人々は、そうならぬよう、慎むべきであろう。」
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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