武田信玄、曰く。
「国を多く取ることは、果報次第である。
殊に天下を取って、日本国中を残らず皆、治めることは、
源頼朝、北条数代、その後、源尊氏、皆果報いみじく、
公方にそなわり将軍になりて、武家の大望はこれに尽きる。
しかし彼らも果報の時刻に当たる以前には、どれほど艱難のことが有っただろうか。
また源義経は弓馬の誉れ、身の勤め共に有ったが、僅か伊予一国にて終わった。
このように、果報とは、人間にはどうにもならない物であり、
ひとまず差し置いて、末代までも弓馬の上に、
汚れ無き如くに慎むべきなのだ。
汚れなく弓馬を取って命長ければ、
果報に任せて、大国も天下も自分の前に降りてくるものなのだ。
例えば四季を急ごうとしても、春から秋へは飛び越せないものだ。
こういった理に昏いために、果報も知らず大国大録を望み、
自分に恩を与えている主君に逆意を企て不義を成すこと多い。
しかしそういった者達は、当分はそれをやりおおせても、
時が至っていないため、大体は非法の死をなす事、古今にその試し多い。
以て戒めとすべきである。」
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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