織田信長は、将軍・足利義昭を擁して、上洛を果たした。
そして将軍の御座所の建設に取りかかるため、各家に人夫と世話役を出すよう命じた。
ある時、信長が御座所建設の現場を視察していると、ある一人の世話役が目に付いた。
皆その日の仕事を終えて急ぎ早に帰るのに、
その者だけは一番最後まで残り材木の切れ端などを、
すべて掃除してから退出するではないか。
気になった信長は翌朝早くに現場を訪れると、
例の世話役が誰よりも早く出仕してもう仕事の段取りをしていた。
それから信長は現場にくる度にこの者の行動を注視していたが、
何度見ても決してその真面目な態度を崩すことがなかった。
信長は「こやつできる!」とビビッときて、
この者の主君である細川藤孝に是非にもと頼み込んでこの者を譲ってもらった。
信長は、早速この者を小姓として召抱え、数々の戦場で指揮をさせた。
するとどうだろう、この者は人一倍勇猛果敢で、
その智謀も他より抜きん出ていたため、
行く先々の戦場で無数の武功を積み上げて行き、
あっという間にその名を知らぬものはないほどに有名になってしまった。
信長はこの者が武功を上げる度に千貫、二千貫とどんどん加増したが、
それでも役不足と思ったのか、
とうとう近江国の滋賀郡六万石の要衝を与えるまでに至った。
そう、信長がこの時召抱えたこの者こそ誰あろう明智日向守光秀その人である。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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