武田家の、遠州高天神城守将の一人に、横田尹松と言う侍がいた。
御存知のように高天神城は徳川勢によって攻め落とされ、
横田は命からがら落ち延び、
甲斐へと逃げ帰った。
帰還した横田を、勝頼は喜んで迎えた。
「よく生きて戻ってきた。褒美を与えよう!」
と、太刀を渡そうとすると、
「何を言っているのか。」
横田は言った。
「城を落ち延びて褒美をもらうなど、私は聞いたことがありません。
このようなもの、頂ける筈がありません。」
そう、その太刀をつき返した。
今になって労苦をいたわるくらいなら、何故篭城している最中に、
援軍を送ってこなかったのか。
言葉に出さずとも、そう、勝頼を批判していた。
勝頼は苦りきった顔で、その太刀を引っ込めたと言う。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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