慶長元年、土佐浦戸に一隻の外国船が漂着した。
暴風雨に遭遇して船体を痛めたイスパニア船、サン・フェリペ号だった。
長宗我部元親は国主として保護を約束し、上方へ通報した。
さて、一息ついたサン・フェリペ号、湾内に移動しようとしたのだが、
岩礁に座礁、船底に大穴を開けてしまった。
布製品から香辛料、金や武器まで大量の積荷が、ぷかりぷかりと流されていく。
この当時は、海から流れ着いたものは、その浜のもの。
土佐の人々も慣例に倣い、勿怪の幸いと荷を持ち去った。
これを危ぶんだのが、久武親直である。
「これは外国との問題です。
通報を受けた上方から、石田三成様や増田長盛様が検分に参られれば、どうします。
船の荷を勝手に処分したとあれば、お家の命取りともなりかねません。
積荷を奪うような者は、この内蔵助でも誰でも、厳罰に処するべきです。」
親直は有言実行だった。
自分の親族の使用人が積荷を盗んだと判明するや、
使用人を処刑、親族も切腹させてしまった。
浜の人々はついに荷を恐れ、避けて通るようになった。
やがて、長盛が検視役としてやってきたが、
この経緯を知り、長宗我部家の処置を褒め称えたという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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