吉田政重と、虎の爪☆ | げむおた街道をゆく

げむおた街道をゆく

信長の野望、司馬遼太郎、大河ドラマが大好きです。なんちゃってガンダムヲタでもあります。どうぞよろしく。

 

長曾我部元親が朝鮮の唐島という所に在陣した時の話である。

この頃何処からともなく大きな虎が現れ、
あまたの軍兵が食い殺されたので、陣中騒動すること甚だしかった。
 

浅野孫次郎親忠の家臣、下元勘助・興次兵衛兄弟は、
隠れなき鉄砲上手、大胆不敵の勇者だったので、
目に物みせん!と駆け出でて、勘助が狙いすまして虎を撃つと、
弟興次兵衛もこれに続いて撃ち放った。

ところが虎はこれをものともせず、いよいよ猛狂って本陣へ近づいたので、
大高坂七三郎(この時十五歳)が本陣へは入れさせぬと、
小刀を抜いて一文字に駆け向かった。
虎は七三郎に飛びかかり、その胴体を横ざまに咥え、駆け出そうとしたので、
吉田市左衛門政重、走りかかって虎の首の根を丁と切った。

虎は七三郎を打ち捨てて、市左衛門の首にただ一口に食らいついたが、
かたい鎧のために砕くことができず、市左衛門、虎の喉笛に手をかけて、
七たび刀で突き刺した。

さしもの虎も急所を刺され、鉄砲で撃たれてはかなわず、立ち竦んで死んだ。
七三郎も助かったので、元親大いに喜び、
感状に康光の太刀を添えて市左衛門に与え、帰国後に加恩もあったそうだ。
 

「その虎の爪を取って、日本の土産にせよ」と元親が言ったので、
市左衛門、畏まり候と虎の爪を切り取って国に持ち帰った。
 

その爪は子孫持ち伝えて、今も彼の家にあると聞いている。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。

 

 

 

こちらもよろしく

→ 夏草の賦・異聞、目次

 

 

 

 

 

 

 

 

ごきげんよう!