今回は2006年6月の上海放浪記となります。この時は仕事での上海出張機会を利用した放浪でした。中国入国は6月10日、出国は7/2という少し長い期間、それでも仕事での訪中となると、なかなか放浪という感じにはならず、今回は珍しく上海近郊の観光地に足を踏み入れています。 (中国の仕事メンバーに案内してもらう)
私自身は放っておくと内面が赴くままの風景を求めて彷徨うので、その行き当たりばったりさ加減を振り返るのが、この上海放浪記をアップする理由なのですが、やはり仕事での訪中となると、内面は現実的な正常さを装い、自分の赴くままとは行かないようです。
内面的には仕事の柵に侵食された制約の中、それでも、暫しの休日(土日)に出かけたところの紹介となります。
土曜日に上海入り、次が日曜日とお休みなので、月曜日からの仕事のことがちらちらと頭を過ぎりながらも(やはり海外出張の初日となると少し緊張します) しかし、一方では上海に来たという開放感もあり、日曜は自然な流れで放浪となりました。
前回(2005年12月)に訪れた龍陽路のリニアモーターカー、どうしても、内面は鉄道にしがみ付いてしまうのです。(リニアモーターカー=磁気浮上式軌道も鉄道の仲間です)
放浪マップ。前回は龍陽路近辺でしたが、今回は中間地点の適当なところでタクシーを降り、軌道のある辺り、リニアモーターカーび軌道を望める場所をゆらふらと彷徨いました。スマホもGoogleMAPもない時代、言葉もあやふやな異国の地で、結構冒険でした。
6/11と6/18はそのパターン。6/25は仕事仲間(中国人)のフォローをいただいて沿線を車で放浪しました。 ここをクリックするとGoogleMAPに飛びます。
さて6/11日曜日、龍陽路-浦東国際空港の中間点あたりで、場所も定かでないまま、たとたどしくタクシーを下りました。(言葉が通じれば、リニアの見える場所とか伝えられたのかもしれませんが)
写真1
ここがどこなのか、標識には長元路の表記は見えるものの、現在の地図と照らし合わせても
合致するところがなく、記憶が曖昧なタクシー下車地点。下の写真も同様
写真2
浦東高速S1とS20が交差するインター付近を放浪。川周公路は道路端を歩くことができ、そこからMUGLEVを眺めることができた。ここをクリックするとGoogleMAPに飛びます。
写真3
川周公路よりMUGLEVを望む。まさに矢のような速さ、飛行機が地上を走っているという感じだった。
写真4
インターの真ん中の公園。のどかな感じ。
写真5
廃品回収のスケールも大。
さて、今回は仕事での出張ということもあり、上海の仕事メンバー(と言っても皆自分よりずっと年下ですが)が休日に上海近郊の西塘(XiTang)への小旅行を企画してくれました。水郷で有名と言うことです。自分も楽しみでしたが、それ以上に彼らも行きたいようでした。皆が揃って旅行したり(社員旅行は日本では遺物的な過去の風習ですが、向こうでは定例的な行事で、参加率も高い)するのが大好きなのです。
西塘は上海から西に位置しバスで1時間ほど。上海近郊は新幹線、高速道路網が充実している。
6/17の土曜日、地下鉄3号線虹口足球場に集合。ここのバスターミナルから西塘に向かいます。
写真6
軌道交通3号線、虹口足球場駅の建物。ちょうどワールドカップドイツ大会の最中で、ロナウドの看板が誇らしげ。だが、ブラジルは準決勝まで進めなかった。
写真7
虹口バスターミナル、チケット売場の案内。右から7番目、西塘1日遊130元を買ってもらう。バス乗車券だけでなく、西塘の入園料や特典も含まれた価格。(今回、私はゲストということで旅費免除)
写真8
日帰りだけでなく泊まりのバスツアーも沢山。興味津々、いつかゆっくり時間をとって回ってみたいものだ。
誘われるがままに訪れた西塘、日帰りでピクニック気分で行くのにはちょうど良いところのようです。上海直轄市を超え、浙江省に入ります。
写真9
古い建物の間の路地が魅力。酒の案内が、昼間から飲みたい心をそそのかす。
写真10
水郷に面した食堂。ビールを飲みながら暫し時を過ごす。
写真11
水路にかけられた石橋から望む。古い家並みと水路、このような風景がずっと続く。
写真
初夏の暑さ、船のなかは少し涼しさを感じる。写っているのは上海の仕事場での若手メンバー。
写真13
西塘のお土産として良く売られているのが、この八珍糕というお菓子。甘い味基本ですが、微妙な味がしたような気がします。帰りのバスの中で食べました。
総勢10人強、上海の若手メンバーばかりに自分ひとり年上、その自分の旅費、食費は免除と言う、暖かい待遇、皆で一日わいわいと楽しい一日でした。
翌6/18は日曜日。打って変わってリニアモーターカーの軌道を一人彷徨います。
6/18の放浪図。川沙路でタクシーを下り、そこからリニアの軌道のある辺りを放浪。事前情報がないまま、当てにならない地図を頼りなので、随分歩き回りました。
ここをクリックするとGoogleMapに飛びます。
写真14
さ迷い歩く途中、どこに行き着くか分からないまま、共和橋を渡る。
写真15
共和橋からの眺め。浦東運河を運搬船が進む。水運が盛んな、ノスタルジックな光景。
リニアモーターカーが最高速で走るのは、迎賓高速道に沿った長い直線区間であることが、地図からも容易に分かります。その直線真ん中辺り、川沙路のインターを出たところでタクシーを下りました。何とか時速430キロでリニアの車体が通過するのを、間近で体感したく、どこか近くで見れるところはないかとレール目指して彷徨いました。
1週間前(6/11)も同じことを考えたのですが、結局場所が見つからず、遠くから眺めるに留まりまっていたのです。丹念に小道を歩き、時には逆戻りして振り出しに戻り、苦労しながらリニアモーターカーの軌道に辿り着きました。たまたま、小川を跨ぐ、軌道に並行した歩道橋があり、そこで三脚を立てカメラを構えることができました。
写真17
写真18
遠くからヘッドライトの光が見え、同時に金属音のような響きが聞こえ、みるみる車体が近づき、通り過ぎるのがあっと言う間の出来事。軌道が塀に覆われているわけではないので、むき出しの時速430Km感覚だった。
翌週の土曜日6/24には、実際にリニアモーターカーに乗ってみました。往路は奮発して貴賓車(ファーストクラス)に乗車。料金は100元、ちなみに一般車(エコノミー)は50元です。
写真19
上海MUGLEVの開通は2002年。当初は龍陽路から先、上海中心を通り更に延伸する構想もあったが、その話は聞かなくなった。龍陽路のレールは行止まり、その先に林立するマンション。延伸の話は夢のよう。
写真20
貴賓室車内。通路仕切上部の速度計は時速430Kmを表示。最高速で走るのは30秒ほど。軌道から浮き上がって進む(摩擦はない)ものの、横揺れと空気振動か、かなりのスピード感を味わえる。窓の外、道路を走る車が飛ぶように流れる。
写真21
貴賓室で偶然乗り合わせた中国の方。浦東空港から大連に向かうという。(承認を得て撮影)
次の日6/25は日曜日、束の間の休日ですが、この日は現地仕事仲間のKさんより前々から上海を案内したいということで、約束していた日でした。好きなところ、と言われ、私の出したリクエストは、それはそれは彼にとって妙なものでした。
リニアモーターカーの沿線を放浪したいというもので、彼にとっては???なのですが、
彼は免許を取り車を買ったばかり、自慢の車を私に見せたいらしく、快く引き受けてくれました。
写真22
上海の部署では課長となり、マンションと車を購入、前途が洋々と広がるKさんにとって、リニアモーターカーを見ながら彷徨うということは、なぜそんな意味のないことをするのかと不思議なよう。でも沿線に車を止めて、自分が放浪する間、待っていてくれて次の場所も探しえくれる、貴重な足となってくれた。
写真23
写真24
金科南路とリニアの軌道がクロスする辺り。写真23は龍陽路に向かう。写真24は浦東国際空港へ向かうリニアモーターカー。
この日の最初の放浪地点。ここをクリックするとGoogleMapに飛びます。
写真25
金科南路に路駐するトラック上の高架にMUGLEVが接近。独立性の高い軌道だが、塀で覆われているのではなく視界的には開放感がある。
先日6/18は浦東運河とクロスする辺りを自力で歩きましたが、この日は車でめぼしい場所を探してもらいました。先日佇んだ場所から500mほど空港よりに、高速道を跨ぐ作りかけの陸橋(2車線道)があり、それがリニア軌道の寸前で行き止まりになってます。一体どんな計画で道路を作ろうとしていたのか、歩道になっているだけの勿体無い構造物でしたが、これがリニアを真近で眺めるにはちょうど良いスポットになっていました。
写真26
至近で430Kmの車体が通り過ぎるのを味わえる。一瞬だけどちょっとした異空間。
先日より500mほど空港より、オブジェと化した陸橋に佇む。この陸橋、最新のGoogleEarthでは、形が定かに見えない(高速道に陸橋らしき影が映し出されてない)のでもしかしたら取り壊されたのかもしれない。ここをクリックするとGoogleMapに飛びます。
写真27
時速430Kmで走行する上海MUGLEV。先日佇んだ高速道の横の歩道橋(浦東運河を跨ぐ)が前方に少し見える。
さて次は更に空港より、リニアの軌道が直線を抜け右にカーブを描く辺りまでKさんに車でってもらい、そこの辺りを放浪することになりました。
この日最後の放浪場所。ここをクリックするとGoogleMapに飛びます。
写真29
空港に向かう最後のカーブ内側に佇みMUGLEVを眺める。
写真30
カーブ外側から。浦東空港に着陸体制の飛行機も見える。
写真31
お世話になったKさん。
考えてしまうのは、自分のように鉄道に惹きつけられてしまう者と、Kさんのようにさほどは鉄道に関心がない者との違いです。この時から10年が過ぎて、Kさんは上海の事業部の所長となり、日系企業で日本と中国の違いはありますが、結構な出世です。且つ自然体での出世です。
一方の自分はずっと同じ会社に勤めてはいますが、それほど変わらない位置づけで、挌闘(葛藤)しながらやってはいますが組織の中で余りぱっとはしないようです。つくづく思うのは、鉄道に引きつけられる自分の内面は、組織の中で成長魚のようにすいすい上って行ける性向とは別世界の性向を帯びていて、世俗的な成功とはかけ離れた存在だ言うことです。
鉄道を趣味としている、と言うよりも鉄道がなければいられない人にとって、現実というもの(身近なところでは会社の組織)は非常に適応しづらい、少なくとも適応するには何らかの葛藤を抱えながら過ごさざるを得ないという、何か共通の、宿命的な性向を抱えているような気がして仕方ありません。 リニア軌道の周辺を彷徨う私を見て、Kさんが不思議に思う気持ちの中には、なぜ何の生産性も伴わないことをしているのだろうという疑問もあることでしょう。
崩れかけている内面がそうした物に、なりふり構わず視覚的な接点を求めているのは、おそらく事実なのですが、私は私で、Kさんに対して(Kさんとは限らず)なぜやすやすと自然体で世俗的なものをきわめて無難にこなし、矛盾や葛藤を抱くこと少なく組織の中での位置づけを上げていけるのか、不思議に思えてならないのです。
*** アウトプットはPHOT PRESSOで紹介中です ***
撮影日:2006年6月11日~6月25日