思いがけないエピローグ | 夕暮れ 坂道 島国 惑星地球

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高橋徹也 official Blog

 

高橋徹也です。

 

はっきりと数えているわけではありませんが、少なくとも週一くらいのペースで本屋さんに通ってます。大抵の場合、ネットなどで調べて事前に買うものを決めているので、あまり長居をすることもなく滞在時間は短め。昔は店内の端から端までをくまなく見渡して、未知なる本探しみたいなこともしたものです。それだけよく行く本屋さんでも、日々新しい書籍が入荷して毎回少しずつ展示レイアウトも変わり、気付かなかった新刊に出会うこともままあります。つい先日はたまたま単行本(ハードカバーの本)のコーナーを見ていると、大好きなガブリエル・ガルシア・マルケスの知らない本が出てるじゃありませんか!なになに?晩年に執筆していた未完の遺稿って!えーっ!思わず変な声が出そうになりながら、速攻でレジに直行しましたね。早速近くの喫茶店で買った本の開封の儀。本のタイトルは『出会いはいつも八月』って、ちょっともうそれだけでテンション爆上がり。物語の舞台設定は八月のとあるカリブの島。これ完全にピンポイントで俺狙いの設定じゃありませんか。ふぅとひと息、深呼吸して最初のページをめくりました。代表作『百年の孤独』に象徴されるような中南米の神話的、魔術的な文体ではなく、最晩年の執筆ならではの簡潔で淀みない文章が、逆に新鮮で瑞々しく感じられました。未発表の作品であるが故、作者ご本人の評価は知る由もありませんが、いちファンとしてこうして読んだことのない新作に出会えたことが何より幸せで胸いっぱいです。自分の中では勝手に、作者から届いた思いがけないエピローグのように感じています。素敵な物語をありがとう!

 

追伸:

そしてもう一冊、この素晴らしい本、ポール・オースター編『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』について記しておきたい。これは全米中から公募した民間人それぞれの数奇なエピソードを、ポール・オースターが監修しラジオ番組で朗読する、という企画から始まったプロジェクト。実際にラジオ番組で放送され、その反響の大きさに応えて書籍化された全二巻の本です。ここに掲載された様々な物語は、本来ならば誰も知ることのなかった普通の市民達のごく私的なストーリー。奇跡、偶然、因縁、綺麗事ではなく、これを読んでいると普通の人の普通の人生なんてないんだなと改めて驚かされます。そして全米中から寄せられた膨大なテキストの中からこの物語を選び、監修したポール・オースターの慧眼たるや、もう感服するほかありません。あまり他人に本のお薦めとかしたくないけど、お時間あればぜひ読んでみてくださいね。短い文章の集まりなので、通勤や通学での電車のお供にぴったりです。

 

それでは今日はこの辺で。

 

素敵な週末を。

 

高橋徹也

 

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