夕暮れ 坂道 島国 惑星地球

夕暮れ 坂道 島国 惑星地球

高橋徹也 official Blog

 
執筆者(敬称略)
 
八野英史(b-flower)
庄野雄治(aalto coffee)
山田稔明(GOMES THE HITMAN)
山口剛幸(ハックルベリーフィン)
木暮晋也(ヒックスヴィル)
山中さわお(the pillows)
曽我部恵一(サニーデイサービス)
溝渕ケンイチロウ
エガワヒロシ
 
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高橋徹也「怪物」を聴いて

 

高橋徹也くんの「怪物」というアルバムがこの春にリリースされました。

前情報で “80年代のイギリスの音楽のテイストも” ということを聞いてたので、どんな仕上がりになったんだろうなと楽しみな気持ちで聴き始めました。

 

1曲めにいきなりガツンとタイトル曲を持ってくるのはきっと自信の現れ。ちょっとビートルズの匂いもして、いつもにも増して伸びやかな彼の男前ボイスに、相変わらず歌上手いなぁと惚れる。

2曲目以降、アルバム前半はまさに80年代のイギリスのロックやポストパンクサウンドを消化した、新たな高橋徹也の世界が繰り広げられています。僕なんかはその風味にニヤニヤしながら聴けて楽しい。

 

そして今回はさらに彼のギタリストとしての素晴らしさを再発見。繰り出されるカッティングやフレージングはもちろん、曲ごとの音作りがもう完璧!

バックを固めているメンバーもただのバックバンドではなく、高橋くんと一体になったバンド感満点の演奏で、すごく気持ちがいい。

 

ソロアーティストならではのバリエーションに富んだ中盤の楽曲が軽やかに流れ、しっとりとした「夜はやさしく」へ。綺麗な曲ですこれはほんとに。

 

そしてそして、僕が今回一番驚き、「高橋徹也恐るべし!」となったのが最終曲「友よ、また会おう」です。

非常にオーソドックスなロックンロールとも言える楽曲とバンド演奏に

 

 “つまらねえ奴ばっかりさ 元気出せよ オールドマイフレンド 乗りのいいレコードかけて踊ろうぜ ほら” 

 

という、こちらもひねりを排除した、ロックの歌詞としてはある意味、非常に古典的とも言えるような言葉が歌われる。

 

もちろんメロディやコード進行には彼独特の匂いは少しはあるけど、ほとんどど真ん中のストレートロック。これね、普通のロックシンガーが歌うと下手すると “ただの凡庸なロック” で終わりがちなパターン。

でもこの曲、この歌、すごくカッコいいのよ。これがここまでカッコよく仕上がっているのはもう高橋徹也だからというその一点に尽きると思う。小手先の技量とかセンスとかの問題ではなく、存在感の問題。まさにロックシンガー、高橋徹也の真骨頂。そういうのって努力して真似できるものではないから、本当に羨ましい。

発売後のライブを開催することが許されない2020年の初夏。早く生で聴きたいよね、みんな!

 

b-flower  八野 英史

 



「怪物」に寄せて

 
恐ろしく音楽の知識を持ち且つ経験のある音楽家が記憶を失くしたまま、
目の前にあったギターを持ち初期衝動で40分間の音を鳴らした。
そこには「怪物」がいた。
飲み込まれてしまえばいい。音楽という「怪物」に。
経験と未熟がアンビバレンツに同居した奇跡のアルバムをありがとう。
 
庄野雄治(aalto coffee)
 
 
 
高橋徹也『怪物』によせて
 
彼は得体の知れない何かに取り憑かれて、ミイラ取りがミイラになる寸前だった。作業難航を伝えるいくつかのメール連絡が途絶えた後に僕に届けられたのは、そのキャリアとか年輪なんかを高らかに笑い飛ばすような疾走感あふれるレコードだった。「怪物」という入り口と「友よ、また会おう」という出口を持つ迷路。僕ら聴き手はその迷路を右往左往することになる。ここから抜け出す道筋を知っているのは高橋徹也だけなのだ。これは世界で唯一のゴッサム・シティ・ポップ(©︎オレ)、ミイラ取りの彼自身が“怪物”となって帰還したのかもしれない。
 
山田稔明(GOMES THE HITMAN)
 
 
 
タカテツさんこと高橋徹也の「怪物」、真っ昼間にも似合うアルバムなんて意外だった。そういえばジャケットも今までで一番明るい。アルバムが届く度に違う表情を見せるというのは、なかなか出来ない事なのだけど、毎度軽くヒョイとやってのけてるようにすら感じる。今回は冒頭から飛ばしているし、アルバムを通して疾走感に溢れていて、これまたジャケのように多彩だなあと。  
 
多彩なのに、あまり飾り気がないと言ったら失礼かも知れないけれど、ストレートな音、驚くべき事に歌詞もストレートな曲まであって、タカテツ史上1番ロックなアルバムなんじゃないだろうか?   
 
という事は、このアルバムはタカテツさんの原点に近いのか?とも思ったり。以前「ストーンズは好きだ」と言っていたのも「え?ほんと?」なんて思ってたのだけど見事に繋がったし、「正体みせてみろよ」の「正体」はこのアルバムかも知れないな。で、やはり聴き手にとっての「怪物」は高橋徹也って事になるんだと思います。
 
山口剛幸(ハックルベリーフィン)
 
 
 
怪物について
 
気になる男、高橋徹也から届いた痛快な新作はクールで怪しくて最高傑作でした。
艶あるヴォーカルにキレてるギター、そして様々なシーンで活動する筋金入りのメンバーによる演奏も極上。
長く愛されるであろう普遍的且つ独特な名曲が揃ったモンスター(怪物)アルバム。
リリースおめでとう。誰も避けては通れない音楽だと思います。
 
木暮晋也(ヒックスヴィル)
 
 
 
高橋徹也は天才がゆえに、自身が造り上げた分厚い殻に、閉じ籠ってしまいそうな危うさを僕は感じていた。 創造力に深く潜り過ぎて、音楽との付き合いが苦しくなるんじゃないかと。 その勝手なイメージは今作「怪物」に塗り替えられた!! 良いじゃないか! 楽しんで生んで、楽しんでレコーディングしたんじゃないかな。 瑞々しさと玄人芸が寄り添う名盤だ。
 
the pillows 山中さわお
 
 
 
甘くてビター、優しいのに攻撃的。
高橋徹也の歌がぼくの弱っちいハートに火をつける今夜。
街のシンガーソングライターはここまで行ける。
 
曽我部恵一
 
 
 
ニューアルバム『怪物』に寄せて
 
徹也くんの新譜を家のスピーカーから鳴らす時はいつも身構えます。準備が必要なんですよ。45分間、微動だに出来ないのでトイレも事前に済ませておきます。ブックレットを手に取り、歌と言葉とメロディとバンドの音を1音も逃さないように。身構えていなければ自分の耳の背後に取りこぼして、過ぎてゆく音が出てしまう。なんと言いますか、1,000本ノック感ですかね。エラーしたらまたカウントはゼロに戻る的な。そりゃもう尋常ではない集中力で聴いています。このニューアルバム『怪物』を制作している最中や完成後に徹也くんとメールでやり取りをしました。ツワモノでヘンタイな徹也くんをして難産をした音源。僕も含めてそうですが、作品を創る際に難産したかどうかは、あくまで創り手の話であって、耳にして下さる方々には関係のない事だと思っています。細部に渡って綿密にトリートメントされた音楽は1,000個のピースがあればその1,000個を埋め尽くしてこその美意識がある。もちろん、1,000個のピースがあってもそのうちの1つから全てが始まる曲としてのDNA。徹也くんのアルバムはコラージュされた短編映画。今作はサウンドスケープを含めて、えげつなさが増しています。曲の印象を反芻しているところに、突然、次曲をブッ刺してくる。そしてその瞬間にもうその曲の世界観に持っていかれる。なんというアルバムを創ったのだ、徹也くんは。1曲目の『怪物』を1コーラス聴き終えた時にグワッと血が騒いだあの感覚。たぎる。徹也くんの立っている平野が見えました。徹也くんはずっとこの平野に立っているんだと思います。ただ、風が吹き抜けて行ったり、その強弱であったり、真横を猛獣が走り抜けてヨロめいたり、気付かないうちに足元に小さな花が咲いていたり、草が生い茂る季節であったり、野焼きされたように枯れ果てた後であったり。僕たちも人生を折り返しているので、暮らしの中で色々な場面に直面しますし、解かしていかなければならない感情もありますが、歳を重ねるごとにアグレッシブに快活になっている徹也くんにいつも鼓舞されています。徹也くんの描く景色を追随し、拡げてくれている鹿島さん、脇山くん、sugarbeansくん、宮下くんの演奏も当然ながら素晴らしいです。最後に、まあ正直に言いますが、前作までは「こんなアルバムを創りやがって!悔しい!」って思っていましたが、今作『怪物』を聴いて、あっ、もう完全に1ファンで居ようと決めましたね。笑。徹也くん、おめでとう!凄いのをリリースしたね!そして… 友よ、また会おう!
 
溝渕ケンイチロウ(ex.ザ・カスタネッツ/ex.セロファン)
 
 
 
「怪物」
 
高橋徹也というシンガーソングライターに出会った時の違和感が忘れられない。ここではないどこかを描いた楽曲は独特な湿り気があり、僕らの日常から少しだけ外れてしまった世界を、誰にも似てないフォルムで描き切っていた。聴く人を異空間に引き入れる「魔力」がそこにはあった。
 
あれから20年を超える年月が経って、新しいアルバム「怪物」がリリースされた。サウンドは鹿島達也さんのベースラインを中心に据えたバンドサウンドに完全に舵を切った。かつての密室感を強調したサウンドからは離れ、どこか風通しの良ささえ感じるものになっている。あの高橋徹也が風通しが良いだなんて!
 
ラストの「友よ、また会おう」に顕著だけど、かつての神経質に美しい世界を彫刻するような、突き放すような高橋徹也はもういない。正面切ってもっと大きな世界を手に入れて、優しささえ感じるようになった。包み込むような感触さえある。
 
しかし、それで「魔力」がなくなったかと言えばそんな事はなく。暴力的なまでに引き込むような力強さは健在。ただ、かつては異世界に連れ去るようだった魔力が、僕らの住む世界そのものを異世界に変えてしまう、もっと具体的な力を持ったものになっていた。魔力を持つ怪物は、僕らの前に姿を現した。
 
そして一つ、メジャー時代から活動を続け、インディペンデントな活動となってもサウンドのクオリティーに低下が見られない事も特筆しておきたい。これはとてつもない事。手練れのミュージシャンが、高橋徹也の音楽世界に夢中になって駆けつけてる事実。それだけでもこの音楽の素晴らしさの証明になると思う。
 
でも、ミュージシャンズミュージシャンでは勿体無いよね。特別な音楽はミュージシャンだけのものじゃない。特別な音楽に特別な場所が用意される事を望みます。そんな世界が見たいな。
 
エガワヒロシ(シンガーソングライター/作詞作曲家)
 
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高橋徹也『怪物』
Man of Words/Man of Music
TVCD 013 / 2,200(tax-in)
2020年3月18日(水)発売
 
01. 怪物
02. ハロウィン・ベイビー
03. トワイライト
04. グッドバイ グッドバイ グッドバイ
05. 醒めない夢
06. always in the same place
07. 川を渡れば
08. 夜はやさしく
09. feeling sad
10. 友よ、また会おう
 
怪物 怪物
2,200円
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