the record - 2023年の印象に残ったレコード | 夕暮れ 坂道 島国 惑星地球

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高橋徹也 official Blog

 

高橋徹也です。

 

師走時期の恒例と言いましょうか、今年出会った印象的なレコードについて少し振り返ってみたいと思います。まず海外からの輸入レコードの価格が高騰している今、以前よりレコードを買う機会は減りました。その分節約も吟味もして、より満足度の高いレコードに出会えた一年だったと思います。昨今サブスクや動画サイトも定着し、CDやレコードを買わずとも好きな音楽を聴ける環境が当たり前なので、レコードを買って聴くということのハードルも上がっているように思います。もはや聴けるのは当たり前。レコードを買うならそれにプラスアルファの魅力がないと手が出にくくなっているように感じます。だからと言って何でもかんでもカラー・ヴァイナルだの特殊パッケージだのというのも辟易しますが、適度に所有欲を満たしてくれるグッズ的要素は不可欠。手に取ってジャケットを眺めて、ターンテーブルに乗せ針を落として音楽が始まる。僕にとってそんなトータルでの流れがレコードを所有することの愉しみと言えるでしょうか。楽しいことも、そうでないことも、色々あったこの一年。ここに掲載する素敵なレコードと共に記憶に留めたいと思います。それでは2023年の印象に残ったレコード10選をどうぞ。

 

 

Boygenius『the record』

ソロとしても活躍する三人のシンガーソングライター、ジュリアン・ベイカー、フィービー・ブリジャーズ、ルーシー・デイカスが集まったオルタナティヴ・ロック・バンドのファースト・フルアルバム。なによりも三人が曲を作って歌えるということが大きいなと感じさせる才能の塊のようなバンド。エンディングが永遠に針飛びし続けるというアナログ盤にしか出来ない演出に感動しました。タイトル通りまさに2023年を象徴する"the record"です。

 

Gia Margaret『Romantic Piano』

アメリカのシンガーソングライター3rdアルバム。今作はピアノを基調としたアンビエントでポスト・クラシカルなインストゥルメンタル作品。数曲でヴォーカル曲もありアルバム全体を通じて本当に隙のない好内容。今年一番ターンテーブルに乗ったレコードの一つです。素晴らしい。

 

Hollie Kenniff『We All Have Place That We Miss』

今年は個人的に歌の入っていない音楽、そしてアンビエントやインスト作品を好んで聴いてきた一年だったと思います。このアルバムは旅先の名古屋でジャケットの美しさに惹かれて偶然手に取った一枚。そういう一期一会な出会いも含めてとても気に入っているアルバムです。レコードには買った場所の記憶やその時の想いが詰まっているものですね。

 

Laurel Halo『Atlas』

アメリカはL.A.拠点の電子音楽、アンビエント・アーティスト、ローレル・ヘイローの5thアルバム。まずジャケットを見て、これはただ者じゃないと思わせるものがあり、実際に音を聴いてもその印象は変わりません。個人的にパッド・シンセがメインのドローンっぽい曲よりも、遠い生ピアノの音を基調としたノスタルジックな曲に胸騒ぎしました。

 

Lana Del Rey『Did you know that there's a tunnel under Ocean Blvd』

これも今年出たアルバムだったか!?と思わず忘れてしまったほど、遠い過去のようにも感じる不思議な魅力を持ったレコード。ヴィム・ヴェンダースの同名映画を思わせる『PARIS, TEXAS』他、ポップスと映画音楽の中間に位置するような曲調が魅力的。

 

 

Sandrayati『Safe Ground』

詳しくは知りませんが、インドネシア出身でアメリカで活躍するシンガーソングライターで、老舗ジャズ・レーベル"Verve Records"よりリリースされたファースト・アルバム。エレキギター、ピアノの弾き語りを基調に、曲によってはストリングスが入ってくる感じ。エレキギターを使用することによってインディーロックっぽい要素も加味され、個人的にとても好みです。

 

Fabiano Do Nascimento『Lendas』

この人は今年いったい何枚アルバムを出すのか?と思わせるほど、多作で精力的な一年だったブラジル出身のギタリスト、ファビアーノ・ド・ナシメント。本作はブラジル音楽界の生きるレジェンド、アルトゥール・ヴェロカイがストリングス・アレンジを手掛けた、荘厳で流麗なインストゥルメンタル・アルバム。素晴らしい。

 

Ana Frango Eletrico『Me Chama De Gato Que Eu Sou Sua』

個人的に今年はインディーロック熱が少し落ち着いて、ブラジル音楽への興味がまた戻ってきた一年と言えるでしょうか。ブラジル、特にリオの新しいアーティストの活躍が目覚ましい一年だったようにも思います。前作も好きだったアナ・フランゴ・エレトリコの新作は70'S/80'Sソウル〜ブギーの現代版といった好内容で素晴らしかった。ジャケットの虎Tシャツあったら絶対買う。

 

Ze Ibarra『Marques, 256.』

続けてブラジルはリオの新しいアーティスト、人気バンドBala Desejoのメンバーでもあるゼー・イバーハのソロ・ファースト・アルバムを。本国では大御所ミルトン・ナシメントのツアーに同行し、ヴォーカリストを務めるほどの実力と人気振りで、初の来日公演も大盛況だったそう。ギターとピアノ、そしてヴォーカルのみを自宅でレコーディングしたという最高の弾き語りアルバムです。

 

Rubel『As Palavras Vol.1 & 2』

この年末一気に良作リリースが続いたブラジル音楽シーンから、人気シンガーソングライター、フーベルの3rdアルバムでこの10選を締めたいと思います。このアルバムは僕が今年買ったレコードの中で、最も満足感の高いグッズとしての魅力を持つ一枚です。音楽の内容もさることながら、ジャケットのアートワーク、美しいカラー・ヴァイナル、もうパッケージングが完璧に好みでした。値段はクソ高かったけど(泣)一年のご褒美と思って奮発しましたよ。

 

 

あとがき

 

はい、そんな訳で2023年の印象に残ったレコードを10枚振り返って見ました。選ぶ基準としてはまず新録された新譜であることを条件としました。自分は基本的にここ十年くらい、過去の音楽や再発盤にはなるべく手を出さないようにしていて、現在作られている音楽をメインにレコードライフを楽しんでます。古いレコードや音楽は大好きだけど、それはもう若い時に充分すぎるくらい聴いてきたかなって。自分は作曲や演奏もしますけど、ずっと根底にあるのは「いち音楽好き」という感覚です。その中でもやはりレコードという音楽表現には特別な思い入れがあるので、来年も素敵なレコードに出会えることを楽しみにしています。

 

それでは今日はこの辺で。

 

adios!

 

高橋徹也