「極む!ファシリテーターズ・ガチキャンプ」を開催しました | Work , Journey & Beautiful

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オルタナティブな学びを探求する

「極む!ファシリテーターズ・ガチキャンプ 〜ツワモノ達が本気で技を披露し合い、磨き合う。インストラクション&ファシリテーションで突き抜ける2日間〜 」 (タイトル長い)なるイベントを仕事はじめもそこそこに1月4日、1月5日に開催した。

 
 
 
 
▶︎講師陣など、詳細はイベントページを参照のこと
 
そもそもの事の経緯としては、僕が常にお世話になっているHRD研究所の吉岡さんと、とある11月の週末うちの会社で色々と相談していた時に、これまたいつもお世話になっているこども国連の井澤さんの話になり、かねてから吉岡さんが「最近調子こいてる井澤をフルボッコにしたい」と仰っていることを受けて、「公開処刑、もとい公開ワークショップにしましょうよ」「いつやる?」「いっそ年始にやりましょ。そしたら変態ばっか集まると思うので。」みたいな話になったのが発端。
注)僕も吉岡さんも井澤さんのことを愛してやまないオッさん達です
 
企画の骨子はこうだ、
 
一、国内屈指のインストラクター/ファシリテーターが、
  その「学びを促す技術」を伝授する講義&演習を行う
二、参加者は、受講者流としてその技術を伝授するセッションを受講する
三、受講後、リズ・ラーマン法(Critical Feedback Process 詳細は後述)を
  用いて、全員で講師に対してフィードバックする(フルボッコにする)
四、一から三を7人の講師が実施する。その伝授、ならびに、フィードバック
  するすべてのプロセスから、全員で学び合う
 
この骨子だけでは何をするか?が分かりにくいかもしれないが、このプロセスを図解したのがこちら(ミテモのデザイナーI田さんデザイン。内容のガチさに反比例して、かわいい。)
 
ほんわかしたイラストで描かれてはいるが、いかにこの場が緊張感溢れる場となったかイメージしてもらえるだろうか?
 
おそらく、リズ・ラーマン法を国内の人材開発業界で取り入れるのも初?なのではないかと思うし、インストラクション/ファシリテーションの技を伝授するセッションそのもののインストラクション/ファシリテーションを批評するというメタ構造のデザイン(設計)も中々他では見られないものだった。珍しいからそうしたのではなく、あくまで、全員で学び合うためにこのデザインにしたということを、念のため強調しておく。
※僕がデザインしたんじゃないけど。
 
まずは、リズ・ラーマン法というものが、おそらくあまり馴染みのない人が多いと思うので、この手法の解説をする。
 
 

リズ・ラーマン法とは?

上述したが、リズ・ラーマン法の正式名称は、Critical Feedback Processと言う。
 
突然だが、皆さんは、「相手の何かしらのアウトプットを育てる」ためのフィードバックというものに悩まれたことがあるだろうか?僕は、ある。
 
相手のアウトプットをより良いものにしようと思えば思うほど、具体的かつ根本的な批評を伝えたい、と思う。しかし、「これを作るのにこの人は並々ならぬ努力をしてるんだよなぁ」なんてことを思うと「ともするとその努力を否定することにもなりかねないし、傷つけちゃうかもしれないなぁ」なんてことを思ってしまう。相手との信頼関係がしっかりと構築されているならまだしも、まだ出会って日が浅かったりすると「今のこの関係でそこまで突っ込んだりしたら受け止められないかもしれないし、、うーむ、今日はやめておくか」などと思うにいたり、フィードバックを伝えるのをやめてしまったりする。なんて経験をお持ちだろうか?僕は、ある。
 
しかし、何かしらのアウトプットの質を上げる上でフィードバックを受けることは極めて重要だ。であるからこそ、フィードバックを伝えるべきか、否かに頭を悩ませる。僕は、割とよく悩む。
 
そんなスパイシーなフィードバックを、受取り手が最小限の精神的苦痛で受け取れるようにするための手法、それがリズ・ラーマン法だ。元々は舞台などで活動するアーティストがお互いの作品を批評し合うために発案された手法なのだが、それを今回は講師(インストラクター/ファシリテーター)をアーティストに見立てて、その技の伝授という作品へのフィードバックをしながら、講師と受講者が学び合う、ということをした。
 
 

リズ・ラーマン法の進め方

進め方は以下の通りだ。(各STEPの名称はリズ・ラーマン法により)
 
ここでは、アーティスト=講師と受講者(批評者)と進行を補佐するファシリテーターがいて、表現者があるセッションを披露した場面を想定して、説明する。
 
STEP1 Statements of Meaning
受講者はセッションを受講して、自分にとって"意味ある"と感じたことを表現者に伝える
 
STEP2 Artist as Questioner
講師は、"たった一つの質問"を受講者に問いかける。
この"たった一つの質問"とは、自身がセッションを届けるにあたって特に意図したことなどが相手にどのように伝わっているかを確認するもの。その質問は、ファシリテーターの助けを受けながら、設定される。
 
STEP3 Neutral Question from Responders
受講者は、講師に対して"ニュートラルな質問"をし、講師は質問に答える。
この"ニュートラルな質問"とは、否定的でも肯定的でもない質問のことを言う。例えば、「なぜ、こんな冷めたピザを出したの!?」という否定的な質問を投げかけるのではなく、「何の種類の生地を使用したのですか?」といった質問を投げかけることがニュートラルな質問である。(質問の例示はリズ・ラーマン法の解説より引用)
 
STEP4 Permissioned Opinion
受講者は、批評を伝えるチャンスが与えられる。批評をする際には、「これから◎◎についてコメントをしたいのですが、聞きますか?」と講師に尋ねる。講師は批評を聞くことも、拒むことも選択できる。
 
これが、リズ・ラーマン法の進め方だ。より、詳細を知りたい人は、こちらもどうぞ。
 
さて、リズ・ラーマン法を用いることで、実際にスパイシーなフィードバックがやりとりされるのか?結論から言うと、この手法は非常に有効だった。ぜひ、フィードバックにお困りであれば、おすすめしたい。STEP1からSTEP4へと手順を進めていくことで、フィードバックの質がPositiveなものからCriticalなものへと質的に変化していくプロセスもよくできているデザインであるし、講師役も心の準備ができているからかフィードバックを受け取りやすそうだった。(とはいえ、心中穏やかではなかったと思うが)
 
講師役を務めた方も「まさかはじめて会った人から、こんなにも鋭いフィードバックが得られるとは思いもしなかった」とのコメントもあった。
※なお、中には枝葉末節なフィードバックもあり、全体のデザインとしては改善を要するが、これは参加者の共通認識や前提知識が揃っていないことに起因するところが大きく、リズ・ラーマン法の問題ではなかったことも付け加えておく
 

振り返って

最後に、個人的にこのイベントを振り返り、感じたことを三つ記しておきたい。
 
一つ目は、ファシリテーターとしての学び。学びの場は、場のデザイン(設計)とデリバリー(進行)とで成り立つ。そして、しきりに今回のイベントで参加者から声が上がったのは、「デザインが重要」という声だった。
 
もちろん、僕もその意見には同意する。が、一方で、リズ・ラーマン法というすでに先人が確立したデザインに基づき、極力忠実にデリバリーをした(厳密には、デリバリーできるように吉岡さんがデザインした場を出来る限り忠実にデリバリーした)ことで、濃密な学びの場が生み出されていく様子を目の当たりにして、すでにある素晴らしいデザインを使いこなすことの重要性を痛感した
 
シャルトルのベルナール、あるいは、ニュートンが用いた言葉として「巨人の肩に立つ」という言葉がある。先人の積み重ねた発見に基づくことで、僕らはより先に進むことができる、という意味だ。新しいデザインを生み出すこともさることながら、すでに世の中には優れたデザインが山ほどある。先人の理論、デザインをこそ学び、使いこなせるスキルを身につけることこそが、より多くの人により良い学びを届ける上では極めて重要である、ということを身をもって体験できた。(井澤さんのセッションにおいて、ファシリテーションは考え方も重要だけれど、スキルが重要だ、と述べていたのもそういうことなのではないか?と思っている)
 
二つ目は、「教える教育」を良しとする人も、「教えない教育」を良しとする人も、お互いに学び合える、ということを知った。
 
今回の受講者は、大きく分けると、企業などで研修を実施している講師(何かしら教え、学ばせることが多い)、子どもをはじめとした多様な人にワークショップを実施しているファシリテーター、そのいずれでもなくあまりファシリテーションを日常的に行ってるわけではない人、の3つに分かれていた。そして、初日はその立場の違いによって、講師の伝授する内容に対する捉え方が大きく異なっており、また、その立場の違いからこそ他の立場から学ぼうとする姿勢が弱かった。これは少なからず、この場がどのような場なのか?を探っていたからこその反応だったかと思う。そきて二日目、徐々に場になれ、場についての理解が深まってくると、日頃「教える学び」を実施している人も、「教えない学び」を実施している人も、日頃ファシリテーションを行なっていない人も、大いに学び合える場が出来上がっていた。
 
もとより、教える/教えないは、どちらが優れているとかではなく、学びというものに真摯に向き合えば、その双方から最適なアプローチをとるべきなのだが、そういった日常的な態度を僕たちは超越るできるのだ、ということを改めて認識できた。
 

最後に、はじめはここは何をする場なのか、どんな人の場なのかを探り合っていたはずが、いつの間にか立場・領域を超えて混ざり合って非常に高度なレベルで全員で学び合う、濃密で豊かな学びの場が生まれていたことに僕は感動したワールドカフェのような、全員参加しているが、実質はグループごとに相互作用が起きている状態ではなく、20〜25名の参加者が同時に学び合えている瞬間が何回も訪れていて、素晴らしかった。前でファシリテーションをさせてもらいながら、何度か鳥肌が立つほど。

 

これは、冒頭にも記載した通り、インストラクション/ファシリテーションの技を伝授するセッションそのもののインストラクション/ファシリテーションを批評するというデザイン、講師陣の素晴らしさ(豪華さ)、参加者の学びへの貪欲さの三点が揃ってこそ、だったのではないか。

 

こういう、様々な混ざり合い、つながり合い、濃密に学び合う場こそ、Neo Attitudeを養う。こういう場を、一つ一つ具体化していきたい。

 

そんな、場作りにおいてもファシリテーターとしても非常に学び大きく、感動的な時間でした。参加してくださった皆さま、講師の皆さん、吉岡さんと井澤さん、本当にありがとうございました。

 

次回「極む!ファシリテーターズ・ガチキャンプ」は夏?やる予定。もっと尖らせていきましょー!