心理的安全性は業績のために高めるのか? | Work , Journey & Beautiful

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今週は二日間、キャリアデザインのワークショップのファシリテーションをしていました。3ヶ月連続のワークショップで、ワークショップ間にも宿題があり、「自分にとっての働く軸とは何か?」をとにかく3ヶ月間、じっくりと考えるプログラムの折り返し地点を回ったところです。
 
以前は企業内でキャリアデザインの研修というと組織の中での昇格戦略を考えるものであり、今後組織にどういう貢献をするかを考えるものでしたが、今の時代個人と組織の関係性は急速に変わってきています。一言でいうと組織への貢献と報酬関係から、より自立した選択の時代へと移り変わってきています。組織の中でキャリアアップすることもプライベートを充実することも、一つの選択肢であり、会社に依存することなく、自分にとって最も良い選択肢は何かを自分で考えなければいつまで経っても不満が募る日々を過ごすはめになります。とはいえ、何かを選択する、ということは他の可能性を捨てることであり、不安はつきものです。だからこそ、不安を分かち合いながら誰かと一緒に考えることは大事だなぁと感じながら、場の進行をつとめています。
 

さて、少し話は変わりますが、先日、グーグルが生産性向上を目指して、社内の様々なプロジェクト・チームを多面的に分析した結果をまとめた記事グーグルが突きとめた!社員の「生産性」を高める唯一の方法はこうだ」が、僕の周辺で猛烈な勢いでシェアされていました。

 
この記事の要旨としては、
・パフォーマンスが高いチーム間に共通のパターン、規範、ルールは見当たらなかった
・また、チームが変われば個人のパフォーマンスは良くも悪くもなるのとがわかった
・さらに調べたところ、一人一人が抱えている不安をチームメンバーから解消されることで得られる“心理的安全性”が重要であることがわかった
・そして、心理的安全性を高める(保つ)ためには、自分の身も心もさらすような自己開示とそれを互いに受け止め合う相互理解が重要であることがわかった
 
というものです。僕らのような組織活性を生業にしている領域の方々であれば、これは「前々から体験的にわかっていた」ことであり、「よくぞ立証してくれた」という気持ちになった方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
 
例に及ばず、僕も「やはりそうだよね」という感想です。
 
ただ、これに関して、更に二つのことを感じたのですが、これは自分にとってとても大切なことだぞ、と改めて再認識したので、備忘録として書いておきたいと思います。
 
 

心理的安全性が即成果につながるわけではない

 
先ほどの記事は、Google社、つまりここで描かれているのは一定程度高い専門性とスキルを身につけたプロフェッショナルが集まる会社の話であるということが前提にあります。心理的安全性が高まることで、チームのパフォーマンスが高まるのは、そもそもそれぞれが有する専門性とスキルが発揮され、相乗効果を生んだ結果なのではないかという仮説が成り立ちます。
 
これに対して、日本企業の多く、というかmitemoは必ずしもプロフェッショナルが集まる会社とは言い難い人員で構成されています。これは新卒者や未経験者を積極的に採用しているからこそなのですが、Googleがプロフェッショナル人材が集まるチームであれば、mitemoは(あるいは多くの企業は)ポテンシャル人材が集まるチームです。
 
そして僕の体感値としては、mitemoのようなポテンシャル人材チームで心理的安全性を優先的に高めても即座にパフォーマンスが上がるわけではない(可能性は0ではないが高確率ではない)、と思っています。むしろ心理的安全性が高まり、それぞれが遠慮なく取り組めるようになったとしても、スキル不足、経験不足でパフォーマンスには繋がらないということは現実的によくあることだと思っています。
 
今のビジネス環境においては、営利企業である以上、短期的かつ確実な成果を求められる局面が増加しています。そして、企業の経営者やリーダーたるものは(というか少なくとも僕は)、これら短期的な成果にもコミットしなくてはならないという強いプレッシャーを日々感じています。
 
そんなプレッシャーを解消してくれるのは心理的安全性を高めることだけでは不十分で、むしろプレッシャーと向き合い、現実的かつ具体的な課題を乗り越える綿密な計画とたゆまぬ実行が不可欠だということは強く認識しておきたいところです。
 
 
 

パフォーマンスを上げるために心理的安全性を高めたいのか?

 
ポテンシャル人材が集まる組織において心理的安全性が即座にパフォーマンス向上につながらない、という僕の仮説が正しかったとして、では心理的安全性を高めないのかというと僕の答えはNOです。これは一般論としてどちらが正しい間違ってるとかの話ではなく、mitemoはNOだ、という話です。
 
まず間違いなく言えることは、心理的安全性を高めることが、ポテンシャル人材が集まる組織において短期的には成果につながらなくとも、中長期的に成果を上げ続けていくためには重要だろうということです。
 
ただ、それ以上に思うのは、そもそも心理的安全性を高めることは成果を上げるための手段として捉えるべきなのか?という疑問です。
 
以前、僕が、必ず、この世界から消していくもの。という記事でも紹介しましたが、ハーバードが75年間の月日をかけて研究した結果、人生の幸福感と健康に最も影響を与えるのは“良い人間関係”である、ということを突き止めました。
 
僕がこの研究結果と今回のGoogleの例を見た時に、強く感じたのは、組織の心理的安全性を高めることは、組織で働く一人ひとりが良い人間関係を築いていくことであり、つまりは一人ひとりの幸福感と健康に良い影響を与える、ということです。
 
僕は、誰もが幸せに生きる権利があると信じています。そして、その大きな役割を企業が担えるのであれば、積極的にその役割を担うべきだと思います。これは従業員のため、という側面もありますが、より重要なのはリーダーである僕の幸せのためでもあるということです。
 
こう考えると成果を上げるために心理的安全性を高める、という考えに違和感を覚えます。業績的な成果と心理的安全性の両方とも成果であり、前後関係で捉えるとレンズが曇ってしまうんじゃないでしょうか。