ルーツを求めて知多半島へ行ってきました。 | Work , Journey & Beautiful

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オルタナティブな学びを探求する


先週のことですが、自分のルーツを見に行こうと思い、本家筋(うちは分家筋)が営んでいる酒蔵に行ってきました。醸造文化の発祥の地である知多半島には昔から酒蔵が多く、澤田酒造も嘉永元年(1848年)に常滑に蔵をかまえました。




近代化・機械化を最低限にとどめ、増改築を重ねつつも、160年前に作られた当時のままのところも多くあります。



石炭の煙で煤けた壁や虫に喰われながらも蔵を支え続けている鴨居などは160年前から使われているままなのだとか。歴史の重みを感じます。


造酒に欠かせないのは米、そして水です。この地に蔵を作った当初はこの蔵の真ん中に井戸を掘りました。以前からも水の供給が不安定な地域でもあったそうですが、この井戸を掘り当てたことで周囲の農家が使用していた井戸が涸れてしまうということがあったそうです。この事態が明らかになるや否や、蔵の当主は井戸を埋め、蔵から2キロ離れた山で井戸を掘り、この一帯に用水路を築き、蔵だけではなくそれぞれの田んぼや畑にも水を供給することにしたとか。今回僕らを案内してくれた僕の祖父の従兄弟の政吉爺ちゃん(なんと今年90歳)は今の九州大学で農業を学んだ後、酒造りに携わるとともに用水路のメンテナンスや農家の相談に乗り続けてきたそうです。地元の農家を支え、支えられながら、酒造りを営んできました、


職人の手仕事で作られた米を蒸す桶。



この桶には設計書がありません。職人が手仕事で隙間ができないように少しずつ角度をつけてつなぎ合わせて出来上がったのがこの高さ2.5メートル程の桶です。こういう技術を持った職人がどんどん減ってきているそうで、非常に貴重なものでもあります。

ここは“製麹室”の入り口。


湿度と温度が厳密に管理された部屋の中で、蒸された米が敷き詰められ、“麹の種”がまかれます。この過程が「醸す(醸造)」の最も重要な工程だと言われており、未だ機械化されることなく職人の手作業でもって行われています。

この他にも醸造蔵や貯蔵タンクなども。



こうして出来上がる清酒「白老」。大吟醸はとても味わい豊かでご飯と合わせるというよりも単体で味わうが良しな酒に仕上がっています。


こちらの「嘉永元年」はさっぱりした味わいなので、食事とも合うように思いました。(まぁ僕は下戸なので飲めませんけどね。口に含むだけ(笑))。


ちなみに澤田酒造は酒蔵だけではなく「常滑屋」というカフェ&ギャラリーも営んでいます。


常滑は焼き物(常滑焼き)が有名です。「常滑屋」はその蔵を改築したそうです。とても静かでゆったりとした時間が流れる非常にすてきな空間でした。






この常滑屋の周辺は焼き物散歩道と言われていて、ギャラリーやカフェが隣接しており、散策が楽しそうなところでした。またゆっくり来たいところです。

今回、本家を訪ねたのは元々酒蔵を開放し食にまつわるイベントをするということで遊びに行ったのですが、せっかく行くならばと祖父と親交が深かった方々に挨拶に行き、色々と話を聞かせてもらおうというのも目的の一つでした。僕の祖父は陽気な人ではありましたが、あまり自分の父親(曾祖父)の話や自分の話はしない人だったので、どのような人であったのかをよく知る人から聞きたかったのです。子どもが大きくなったときに、どういう血筋なのかを話せるようになりたかったというのもあります。

曾祖父が髙島屋に勤めていたことやアメリカに駐在していたこと、そして祖父はアメリカで生まれた(らしい)ことなどは初耳でした。余談ですが、ソニーの創業者である盛田さんと祖父は学生時代先輩・後輩にあたり、同じ常滑の酒蔵出身者ということで交流もあったとかも初耳でした。



これまで自分の家柄とか血筋などといったものにそこまで意識を傾けたことはなかったのですが、父親になり、一層血のつながりというものを感じる機会が増えたからこそ、子どもの頃に連れて行ってもらった後20年間以上訪れることのなかった常滑に足を運んだのかもしれません。何よりも自分のルーツを知ることで、(それがどのようなものであるかは関係なく)とても自分の存在が誇らしく尊いものだと感じることができたのがとても不思議です。タイミングと縁というのは大切にしていきたいものだな、と思いました。

ということで、何もないだろうからゆっくりしようと思って行った筈の常滑旅行ですが、何やらあれもこれもと見るものが多く、「また今度じっくり来よう」なんてことをいいながら帰る旅になりました。ということで、今度澤田の酒を飲む会をやります。(僕は飲めませんが(笑))

WEBで注文も出来ますよ→澤田酒蔵株式会社
もし常滑に行った際にはお茶でもどうぞ→常滑屋