現在、第1巻と2巻を合わせた『烏は主を選ばない』がアニメ放送中の、阿部智里さんの小説「八咫烏シリーズ」。
その最新刊がこの『望月の烏』です。
少年だったころの、まだまだ無邪気だった雪哉の活躍をアニメで見ながら、おっさんになった雪哉の苦悩を小説で読む。
これまたオツなものですな。
こんな経験、なかなかできませんぞ!!
ありがとう、NHK!!←何度目だよ
そしてココ、あらすじと書影を入れ忘れてたので追記します💦
累計200万部突破&アニメ全国放送決定!
大人気異世界ファンタジー「八咫烏シリーズ」待望の最新作。絶対権力者・博陸侯の後ろ盾のもとで、
新たに異世界〈山内〉を統べる金烏代となった凪彦。
その后選びのため、南北東西の大貴族の家から選ばれた、
四人の姫君たちが、宮中での〈登殿の儀〉へと臨む。
しかし下級官吏として働く、絶世の美姫の存在が周囲を――。
シーズン2が始まってから、私はずっとこのシリーズがつまらなくなったと言い続けてきました。
でも、この『望月の烏』は面白かった!
久々にページをめくる手が止まらなかったね
なぜかといえば、たぶん、大好きだったシーズン1の面影があるからだろうな。
たとえば、『望月の烏』の舞台は、ちょうど今アニメでも放送している、「金烏(きんう)のお后選び」。
あのときお后選びをしていた「奈月彦」は暗殺され今回は異母弟「凪彦」のお后選びだ。
あいかわらず、女同士のドロドロもある
そして、シーズン2の主人公ともいえる女性・澄生(すみき)が、かつての雪哉(あらすじでいう博陸侯の本名)そっくりであることも、刺さる。
この2人は親子ほど年が離れ、因縁もあるのだが、決して親子ではないし、顔も似ていない。
でも、凪彦には2人がそっくりに見えたという。
なぜならこの2人、ともにめっちゃくちゃ頭が切れるし、ともに目的のためには手段を選ばないからだ。
過酷な子ども時代を過ごしたせいでとんでもない策略家になり、ウソもつくし、人もだますし、毒舌だし、上にたてつくし、ある意味冷酷でもある。
そんな2人が立て板に水で討論し、バチバチに対決するシーンは、今回の白眉だね
ずっと最高権力者として澄ましていた雪哉が、凪彦を床に押さえつけて恫喝するシーンも「キタキタキタ~~!」って感じでゾクゾクしたわ
雪哉はやっぱこうでないと!!
もうひとつ、『望月』を読んで、ちょっとほっとしたんだよね、私。
シーズン2の前2冊では、みんなが雪哉の政治はひどいと責め立てていた。
でも、雪哉はシーズン1で、たった1人の親友も、たった1人の庇護者も、たった1人の理解者も、たった1人の心のよりどころも、すべて失っている。
それでも彼は、滅びることがすでに予言されているこの烏の世界を、少しでも生きながらえさせるために、全責任を背負い込み、それこそ「たった1人で」奮闘している。
彼がしていることは、もちろん「正しいこと」ばかりではない。
でも、彼がいなかったら、彼が正しいことだけを追求していたら、この世界はとっくに混沌状態になって滅んでいたし、次代を担うはずの澄生も死んでいただろう。
そんな雪哉を、「至らない」と非難することは簡単だ。
だって非難する人間(人型の烏だけど)は、責任を負っていないんだから。
自分は親に守られているのに、いっちょまえの理屈をたれ、文句を言う、ガキと一緒だ。
でも、今回の『望月』では、雪哉のやり方に反発しまくっている澄生ですらも、雪哉が無私の心で国の存続のために必死で努力していることは認めている。
だから、自分は彼の敵ではないのだと。
彼の間違いを正したいだけなのだと。
つまり、この2人の目的は一緒だ。
でも、やり方が違うんだよね。
正直、澄生の言ってることは青臭い理想論なんだよなあ💦
貴族の統治ではなく、民の代表に政治をさせる、というのは一見よい方策に見える。
でもね、澄生、1回でも日本の国会を傍聴してみ。
政治資金改正法のドタバタを見てみ。
「民の代表」がどれほど愚かで、あっという間にハラワタまで腐ってしまうか、すぐにわかるから
日本の政治より、清廉な雪哉の「独裁」のほうが100倍もマシなんだから。
というか、カネもヒトも限られる世の中で、全員が完全に幸せでいられる政治ってのはまずもって無理だ
それこそ仮想現実の世界にでも行かないと。
世界に目を向けたら、ウクライナやガザのような戦争がないだけでも御の字なくらいだ。
そうは言っても若者は理想を語るものだし、語ってほしい。
でないと社会は進歩しないからね。
澄生にも、ぜひその理想を追求してほしい。
そしてその先で、澄生が雪哉の重荷をほんの少しでもわかちあってくれたら、かたくなになっている雪哉に「あなた1人で苦しまなくていいんですよ」とわからせてあげてくれたら、心からうれしい。
誰のことも、忠実な右腕である治真のことすら100%は信じていないだろう雪哉に、それができるのは澄生だけなんだから!!
ちなみにこの澄生の正体、みんな前の巻からわかってたと思うけど私、澄生の本名である「葵」って人は実在していて、どこかの段階でホンモノの葵と「少女A」が入れ替わってるんだと思ってた!!
そのせいでホンモノ葵が、人間の住む「外界」に行ったのかと
違うんだね。
恐るべし、女たち。
いやこれってもしかしたら奈月彦の考えか?
奈月彦が遺言で雪哉より浜木綿を取ったのも、何か考えがあると私はにらんでいるんだが・・・。
とにもかくにも、雪哉がこれ以上不幸になる・・・というか傷つきませんように🙏
この世界の誰よりも不幸な雪哉が、ただ故郷と家族を守りたかっただけで、権力者になんかなりたくもなかった雪哉が、今より少しでも幸せになる・・・というかマシな精神状態になれますように🙏🙏
阿部智里さん、そんな新作を心よりお待ちしています
阿部さんの「ドS心」はどうか控えめにてお願いいたします