人は他人を通してしか自分を理解できない、という言葉がありますよね。
それは、ドラマや映画、小説、音楽でも同じ。
そうしたものを通じて、「ああ、私ってこういうものが好きな人間なんだ」と気づくのです。
なあんて書いたのは、不覚にも?とあるBLドラマの最終回に泣かされてしまったから!
いや、超一流のマンガを原作に、超一流の俳優が集結した『きのう何たべた?』には、何回も・・・というかシーズン2はほぼ毎回、泣かされましたよ?
でも、そういうのじゃない(失礼!)この作品に、こんなふうに泣かされるとは思ってもみなかった!
それがこちら。
今週アタマに最終回を迎えた『パーフェクトプロポーズ』です。
「癒やし系BL」なんて書いてありますが、私はこのドラマを見てぜんぜん癒やされませんでした
なぜかというと、主人公・浩国が会社でひどいパワハラに遭っていて、その様子が毎週毎週出てきて、けっこうキツイから
あらすじはこんな感じ
仕事漬けの毎日を送る浩国は、ある日、子どもの頃の年下の友人・甲斐と、10年ぶりに再会します。
住むところがないという甲斐に、毎日ご飯を作ってくれるなら、という条件で、同居を許す浩国。
「子どもの頃、結婚の約束までしたのに」という甲斐は、浩国への好意を隠しません。
言葉は少ないけれど、日々おいしい料理を作り、植物のように静かに浩国に寄り添ってくれる甲斐。
そんな甲斐に、仕事で疲弊した浩国の心にも変化が・・・。
これね、甲斐役の野村康太くん(パパは沢村一樹さん)の顔がけっこう好みという印象しかなかったのに、なぜか初回から心惹かれるドラマでした。
それは、わざとらしいコメディ要素とか、ハデな展開とか、あまあまのデートとか、そういうのが一切なく、ふたりの生活をリアルに描く、地に足が付いた珍しいタイプのBLドラマだったからかもしれません。
浩国はとにかくダメな社畜くんで、イジワル主任の高圧的な言動に、一切反論できない。
家庭環境に恵まれず、何も期待しない人生を歩んできた甲斐が「祭りに行ったことない」と漏らしたのを聞いて、「よし!来週夏祭りに行こう!!」と自分から言い出したのに、結局、主任に「明日までにできるよな?」と言われると「はい」と言ってしまい、甲斐との約束を守れなかった浩国。
それを「仕事だから仕方ないね」と淡々と受け流す甲斐
もう~~~ふたりともなんなんだよ~~~と歯噛みする私
甲斐はさ、本当に浩国が好きなのに、彼に何も求めないんだよ。
浩国が仕事が忙しすぎて、何日も家に帰ってこなくても、浩国の好物を作って「今日の夕飯」と写真を送るだけ。
「帰ってきて」とか「大丈夫?」とか一切言わない。
仕事のことでいっぱいいっぱいの浩国の負担になりたくないんだよね。
だからこそ、気持ちが、優しさが、伝わる。
そんなだったふたりなんだけど、最終回、浩国は部屋を出ようとする甲斐を止める、つまり、甲斐の気持ちに応えることを決意します。
そのとき、浩国の「(仕事は)誰かがいなくてもなんとかなる。でも、お前がいなくなったら、俺は食事をするときも、皿を洗うときも、あらゆるときにお前を探すだろう」っていうモノローグが入るんだけど、これがすごく胸に刺さったの
うちにはにゃんこがいるんだけど、この子が死んだら、きっと私は同じ事をする。
食事してると膝に乗ってくる姿とか、風呂場の脱衣所で私が出てくるまで待つ姿を、ずっとずっと探し続ける。
なぜってこのコは私の生活の一部であり、人生の一部であり、日常だから。
浩国にとって、甲斐の存在はもはやそんなに深いものだったんだ・・・と思ったら、涙があふれて止まらなかった
それでも、人との関わりが薄かった甲斐は、人と関わることの重みに怯えるようになり、「俺がいることで浩国の人生を左右したくない」と部屋を出ていきます。
そんな甲斐を、浩国は窓の風鈴(甲斐がつけた思い出の品)を激しく鳴らして呼び止め、ここに戻ってこい!俺の人生はすでにお前によって変わってるんだから、責任をとれ!と言い、こう叫びます。
「俺の余生くらい、お前にくれてやる!」
・・・いや、アンタ20代半ばやん。余生って
とは思いますが、これが「パーフェクトプロポーズ」、なんですね。
じつは私はこのプロポーズよりも、浩国が「今日、会社に辞表出してきた」と言ったことに、むっちゃくちゃ感動しました!
自分に自信がなくて社畜の浩国は、周りから会社を辞めた方がいいと言われてもかたくなに「僕にはムリです」と拒んでいたから、絶対に辞められないと思ってたのよ
でも浩国は「このままじゃお前とちゃんと向き合えないから」と、甲斐のためだけに、会社を辞めるという大きな一歩を踏み出したんです。
現実社会で考えてみて?
これってスゴイことだよね!!!
で、ふたりの心がひとつになっての初H翌朝(あ、もちろん朝チュンでっせ)、主任からの無粋な日曜日(でもおかまいなしのブラック企業)の呼び出しをスルーする浩国。
「今日、日曜日だしね」と晴れ晴れとした顔でベッドで伸びをする浩国は、最高に可愛かったので、あれは確実に2回戦突入でしょうな
そうそう、このHの前、植物みたいだった甲斐が、浩国に「やりてえ!」って言うんですよ
ココ、ヘンに甘い言葉を言わないのがすっごく良かった
そのくせ、先輩に焼きもち焼いて「浩国はもう俺のじゃん」とかさらっと言ったり、「チョロクニ(ちょろい浩国)」なんていって翻弄してくる。
こんな年下男子、惚れない方が難しいよね?
それでね、なんで私がこの作品を気に入ったかといえば、私って恋愛を通してお互いが変化する、成長するBLが好きだからなんだわ!
男女の恋愛だと、どっちかだけが大きく成長するパターンが多い気がするのね。
のだめカンタービレでは圧倒的にのだめちゃんが、タッチではたっちゃんが
もちろん、BLにもそういう作品はありますよ。
でも私は、男性ふたりの立場が(攻受あっても年齢差あっても)対等で、それぞれがそれぞれによって人として大きく成長する、変化する話が好きなんだわ
と、改めて気づかせてくれた、良きドラマでした
たったひとつの大切な約束も守れないダメな大人の浩国が、たったひとりの人のために変わろうとした。
その勇気に拍手です
PS:野村くん、若手にしてはキスシーンうまくない?
あれ絶対パパに習ったでしょ