第9艦隊母艦の捕虜尋問室には拘束された海三姉妹と、ヒーロ・ハル、シュー・ツカサがいた。海アスカと海かほりはここへ連れてこられるまで口を閉ざしたままだった。海未来はコーヤス・エーイに投げ飛ばされ気絶してからまだ目を覚ましていなかった。
捕虜尋問室のとなりには、尋問室をマジックミラーで監視できる部屋があった。今、その部屋にユーリ・ザックとコーヤス・エーイ、ユーキ・ウノイが待機し傍観していた。
最初に口を開いたのは海アスカだった。
『なぜここがわかった。』
海アスカはヒーロ・ハル、シュー・ツカサ、どちらとも決めず質問した。
『そこでのびてる彼女が、教えてくれたのさ。』
シュー・ツカサが答えた。そして間を少し空け、すべてのネタ明かしを始めた。
違法商船の情報を事前にリークし、それを連合が先に取り締まりコーヤス・エーイを潜伏させた。予測どおり、コーヤス・エーイが潜伏した違法商船が襲われた。違法商船内の物資が海賊船に移されるのを確認した連合艦隊が海賊船団を包囲した後、海賊船団は包囲網を突破した。海賊船団が木星の海賊船団ドックに帰還し、強奪物資に紛れていたコーヤス・エーイが海賊船団ドックに侵入。ここまで、シュー・ツカサが言うと、海アスカが遮るように言った。
『あの侵入者が知らせたのか。』
シュー・ツカサは首を振り、そうではないと言った。知らせる為に通信機器を使用するとしても、その通信範囲は限られてしまうし、通信電波の傍受対策は海賊側ですでにしているだろうからそれで潜伏がばれてしまう。彼はあくまでここに侵入しタイミングよく君らの注意を引くことだけだった。そう言い終わり、遮られる前の話に戻った。
連合の討伐隊2千隻が海賊船団を包囲し、あえて包囲網を突破させた。海賊船団を捕獲する為に使用したレーザーネットでは、こちらとしても海賊船を捕獲することはできないと考えていた。それでもあえてレーザーネットを使用し海賊船にひっかけたかったのは、そのレーザーに含まれる特殊な粒子を海賊船に付着させたかった為である。この粒子は電気質ではないので海賊団の傍受対策の目にもかからない。ただし、連合が開発した特殊な装置であれば、それを追跡することが可能だった。追跡有効範囲は限られるが、ドックとなりうる場所で待機して待つということであればその問題もなくなる。
ここで海アスカがまた遮る。
『まて、ドックとなりうる場所なんていくらでもあったろう。なぜ木星だとわかったんだ。』
当然の問いだとでもいうように、シュー・ツカサはそれに答えながら続けた。
「海」海賊団が、奪った物のほとんどを貧しい惑星の人々に分け与えてしまうという行動から、海賊団自体にはそれほど財源がないと判断した。つまり、衛星やコロニー、巨大隕石を装った船団ドックではないと推測し、惑星一本に絞った。地球、、火星、水星、木星、金星、土星、天王星、海王星すべてに監視艦として2千隻を分散して待機させておいた。移動するすべての物体を付着粒子のみに反応する特殊装置で監視続けること2日、ついに木星にてその動きを確認。監視状態のまま追尾しこのドックを発見するに至った。次に討伐軍が撤退するのを見せ危険が完全に去ったと錯覚させた。2千隻の艦隊は確かに木星基地から撤退した。「海」海賊団の監視船は現在もそれを尾行しているだろう。撤退した艦隊とそれを尾行する監視船を見送った後、こちらが用意した監視船に乗り込みドックに堂々と帰還するという形で入り込んだ。入り込む際に、君らの用心深さを違うものに向ける為、コーヤス・エーイがここで一役かった。また、ドックでのやりとりに乗じ連合2千隻の艦隊の内1千隻がドックに入りドッグ内の制圧を行った。先に言ってしまうが、討伐隊はそもそも4千隻の艦隊だった。それをあたかも2千隻しかいないように見せていた。2千隻しかいないという先入観からすれば、2千隻が地球に向かっていけば討伐隊が完全撤退したと錯覚するのは必然。結局、君らは捕まるべくして捕まったんだよ。そう言ってシュー・ツカサは話を終えた。
『なるほどな、よーくできた作戦だ。お前が考えたのか。』
海アスカはシュー・ツカサの方を見て言った。シュー・ツカサはそれには答えずただニヤッとしただけだった。
シュー・ツカサのこの意味深な行動は、海アスカに対してのものではなくユーリ・ザックに対し手のものだった。ユーリ・ザックが発案したこの作戦の全容をさも自分が考え出したかのように話しているので、当のユーリがどう思っているかを考えるとついニヤリとしてしまったのだった。
ユーリ・ザックが書いた台本を読む役者でしかなかったシュー・ツカサではあったが、それでも海アスカの尊敬と厚意を得るには十分だった。