『諸君、「海」海賊団のドックは木星連合基地の真裏にあるとのことだ。』
ユーリから第9、第10艦隊の全員にそう伝達された。
消えていた第4、第8艦隊が木星基地に現れたのはそれから3日後だった。「海」海賊団所有の連合軍艦は、補給を終えた連合討伐隊が地球へ帰っていくのを監視していた。
木星連合基地の真裏に位置する「海」海賊団のドックでは、その連絡を受けた3人の美女が話合いを始めていた。
『アスカ姉。それは5日前、私が追われた討伐隊に間違いないわ。』
「海」海賊団を束ねる「海」という男は実は存在していない。実際に海賊団を束ねていたのは、海三姉妹だったのである。長女アスカ、次女未来、三女かほりの3人がそれぞれ船団を持ち、別行動で「海」海賊団を名乗っていた。長女アスカは、商船の船団。次女未来は、連合軍艦の船団。三女かほりは、旅客の船団であった。今回討伐隊に見つかったのは連合軍艦の未来の船団である。
『なるほど。それにしても今回はすんなりと逃がしてくれたわね。それが気になるところでもあるけど、討伐隊も不甲斐なく帰ったみたい出し問題はないみたいね。』
海アスカはそう言い、二人の妹達を見た。1時間ほどして監視船が戻ってきた時、侵入者の報告が海未来のもとに入った。商船から奪った物を宝物庫へ移動している際に商船から船団に潜り込んだらしい。海アスカと海かほりもそれを知り侵入者を確認しにきた。
『おまえは何者だ。商船の護衛か。奪われた荷物を取り戻そうと乗り込んでいたんだな。』
三姉妹の中で一番背の高い次女海未来が、自分と同じくらいの背格好で筋骨隆々の侵入者に言った。侵入者の男はなにも言わなかったが、周りの者は彼を囲むだけで威圧され捕まえることができずにいた。
男の名前は、コーヤス・エーイ。マリー・ティーチの親衛隊長を務める連合気鋭の白兵戦のエキスパートだった。今回の戦いでの彼の役割は2つ。違法商船の鎮圧と、その商船を利用しての海賊団ドック侵入であった。また、監視船到着時の注意を自分に向けることにも一躍をかった。
銃を取り出し、その男へ脅しをかけようとした海未来の動きが止まったのは、次の瞬間だった。
海三姉妹と海賊達は不注意だった。目の前の男だけに目を向けていて周囲の違和感に気がつかずにいた。監視船から降りてきたのが、シュー・ツカサとヒーロ・ハルであったことなど確認する余地はなかったのである。
『その質問には僕が答えよう。ま、その前にその銃は全員こちらに渡してもらおうか。』
ヒーロは海未来の後頭部に銃を当てながら言った。すでに海アスカも海かほりもシューとその部下に銃を向けられていた。
『未来。ここまで押し込まれてしまったら負けを認めるしかないわ。銃を渡しなさい。』
海アスカがそう言い、自分の銃に手をかけた時ことは起こった。
海未来は前転しヒーロ・ハルの銃口から逃れ、前方にいる素手のコーヤス・エーイを人質にしようと飛びついた。
ヒーロ・ハルは、銃口から逃れた海未来の飛びついた先がコーヤスであるのを確認すると、シューの部下の銃口から逃れ、捨てた銃を拾い上げた海かほりの手元をけり飛ばし抑えこんだ。
海アスカは忍ばせていた小銃をシューに突きつけた。突きつけたはずだった。海アスカが手にしていたのはよくできた銃のレプリカであった。海アスカの銃は、シューの手に握られ海アスカ自身につきつけられていた。
コーヤス・エーイに飛びついた海未来が次になにかを考えられるようになるのは1時間後ぐらいだった。飛びかかる勢いのまま彼女はコーヤス・エーイに一本背負いをくらって地面にたたきつけられてしまった。
『気の毒に、コーヤスに向かっていったのが最大のミス。まだ僕の方に来た方が可能性があったと思う。』
海かほりを捕縛しおえたヒーロが一息ついて言った。
『焼きが回ったようね。今度はほんとに観念したわ。処刑でもなんでもしなさいよ。ただ、私の妹達は見逃して頂戴。』
海アスカは、シュー・ツカサに言った。しかし、シュー・ツカサはまずは来てもらおうといい、三姉妹と海賊団の首脳4名の計7人を、第9艦隊母船の捕虜尋問室に連れて行った。
この過程ですでに海賊団のドック全体は第9艦隊によって完全に制圧されていた。