【解答】 文化的価値が損失補償の対象となるの? | 『てっし録(^▽^)』~書法で人生を豊かに生きよう!

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3月15日に出題した問題(「文化的価値が損失補償の対象となるの?」)の答えです。

※問題をご覧になっていない方は、こちらをご参照ください。
http://ameblo.jp/teshinosuke25/entry-10028083831.html


ぽけ~ 答え

・問題文の前段:○
(土地収用法の「通常受ける損失」=経済的財産的な損失)

・問題文の後段:○
(文化財的価値を反映した市場価格=その物件の補償されるべき相当な価格)


ぽけ~ 解説

・問題文の前段について

都市計画制限等を受けた土地の収用に対する権利対価補償について、最高裁(最判昭48.10.18)は以下のように述べています。

「土地収用法における損失の補償は、特定の公益上必要な事業のために土地が収用される場合、その収用によって当該土地の所有者等が被る特別な犠牲の回復をはかることを目的とする」
「(したがって)完全な補償、すなわち、収用の前後を通じて被収用者の財産的価値を等しくならしめるような補償をなすべきである」
「金銭をもって補償する場合には、被収用者が近傍において被収用地と同等の代替地等を取得することをうるに足りる金額の補償を要する」


要するに、公用収用における権利対価補償は、「完全な補償」でなければならないということです。

※公用収用とは、特定の公共事業のために、国等が特定の財産権を強制的に取得することです。土地収用がその例です。


・問題文の後段について


土地収用法88条の「通常受ける損失」に対する補償の中に、文化財的価値の喪失に対する補償含まれるかが争われましたが、最高裁(最判昭63.1.21)は以下のように述べています。

「土地収用法に規定されている「通常受ける損失」は客観的・社会的にみて収用に基づき被収用者が当然に受けるであろうと考えられる経済的財産的な損失のことであり、経済的価値でない特殊な価値についてまで補償の対象とする趣旨ではない

要するに、文化財的価値は、市場価格の形成に影響を与えない限り、損失補償の対象になりえません

裏からいうと、文化財的価値も、市場価格に影響を与える限りにおいて、損失補償の対象になります。

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http://ameblo.jp/teshinosuke25/entry-10016240491.html