映画『PERFECT DAYS』を観る | 街道歩き

街道歩き

2022年東海道五十三次完歩後、いろんな街道歩きをしています。

2024年2月23日

 

「Perfect Days」観ました。

 

汚い・臭いという公共トイレを、誰もが使いたくなるようにと発足した渋谷区のトイレ改修計画「THE TOKYO TOILETプロジェクト」

プロジェクトの発案者である柳井康治さんが「東京のトイレを舞台にした清掃員の話」というテーマだけ投げて、あとはベンダース監督が作り上げたそうです。

 

監督によると、彼と交流のあった「レナード・コーエン」が、禅の修行のひとつとして「トイレ掃除」をしていたことが、「平山」という主人公をつくるきっかけになったそうです。

 

トイレ掃除が修行の第一歩、というのは日本人にはわかるトイレ

家でも学校でも、掃除をすることは心を磨くことだと教えられました。

特に、トイレ(便所)掃除こそ大事なんだ、と。

「トイレの神様」という歌もあったっけスター

 

1⽇3回の清掃が行われているというそのトイレを舞台に、

清掃員・平山の淡々とした日常をドキュメンタリーのように描いています。

 

押上の古い木造二階建ての家に住み、

夜明け前に道路の落ち葉を掃く箒の音で目覚め(天祖神社の落ち葉か?)

歯磨き、髭剃り、口ひげを整え、洗顔し、湯飲み茶わんに植えた小さな木に水やりをし、

寝た時に来ていたTシャツとパンツの上にツナギの作業着を着て、

玄関にある鍵や小銭を持って家を出て、自販機でカフェオレの缶コーヒーを買う。

清掃用具の積み込まれたワンボックスの軽に乗り込み、

カセットのテープを聞きながら首都高を渋谷に向かう、という朝のルーティンです。

 

トイレを黙々ときれいに拭きあげて、昼はこのトイレの上の森

代々木八幡神社境内のベンチに座って、サンドイッチと500㏄の牛乳でお昼。

伊藤豊雄監修の「代々木八幡公衆トイレ」3本のキノコ

平山はこの鳥居をくぐって、境内へ。

 

スダジイ・クスノキ・ケヤキ・イチョウなどの木々が豊かに茂っています。

その木漏れ日の写真を撮るのが日課です。

 

仕事が終わると、銭湯に一番乗りします。

顔見知りはいますが、目だけの挨拶です。

 

そして、浅草駅下の大衆酒場で、オヤジさんの笑顔に迎えられて、

いつもの酎ハイをモロキュウをつまみに、美味しそうに飲みます。

 

いつでもどこでも平山の「ひとり」の佇まいが美しい。

 

その後、自宅に帰り布団の上で文庫本を読みながら眠る。

 

休日には、コインランドリーで洗濯をして、

カメラ屋で、現像するフィルムを出し、写真を受け取り、

行きつけのスナックへ行き、「ポテトサラダ」を食べながら、

ママの十八番の歌を聞くのが楽しみ。

 

ママが声をかけてくれるのもうれしいラブラブ

ママには事情がありそうだけど、平山は遠くから見守るだけだろうなキラキラ

 

ママの石川さゆりが「朝日のあたる家」を歌うのだけれど、

これはどうもいただけない。

石川が醸し出す甘ったるい雰囲気はこの歌には合わないガーン

「朝日のあたる家」は何といってもアングラの女王・浅川マキでなくちゃ!!

 

でも、ここで浅川マキ風がママではグラサンハート平山も通わなくなりそうダウン

 

平山はサンドイッチとポテトサラダしか食べないのだろうか?

 

食事については省略しているような平山は、修行僧のようです。

 

家出した姪と過ごす短い時間に平山の素顔がチラっと見える。

 

平山の妹が来て姪(娘)を連れ帰る場面があり、

 

その時平山の過去が浮かび上がるが、細かい説明はない。

 

説明のない作品は素晴らしいし、無口の主人公は存在感があります。

 

でも平山の眼差しには、いろんな思いや感情が溢れていて雄弁です。

 

朝、家を出るときに空を見上げる平山の顔にはいつも満ち足りた笑顔があります。

 

木々や木漏れ日の自然に向ける眼差しも、

 

平山の周りにいる人に向ける眼差しも、慈しむような優しさに溢れています。

 

そして、最後の5分間

Nina Simone「Feeling Good」の曲をかけながら運転する平山の表情気づき

 

感動の幕引きでしたキューン

 

It's a new dawn


It's a new day

It's a new life for me

I'm feeling good!

新たな夜明け

新たな一日

新たな人生の幕開け

私はすごく良い気分!

街歩きの好きな友人たちと、浅草界隈や渋谷トイレめぐりをしてみたいな音譜