ナトリウムイオン | TERUのブログ

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つれづれに

おーっ、すごい!

 

と、思わず声が出ちゃいました。

 

これを知ったとき。

 

※エレコムのWebサイトより

 

エレコムさんが、世界初の「ナトリウムイオンモバイルバッテリー」を発売したのです。

 

Amazonでは6,490円で販売されています。

 

 

ご存じのとおり、いまモバイルバッテリーでは……いえ、充電できる二次電池としては、リチウムイオンが主流です。(ニッケル水素もあるけど)

 

ナトリウムイオン電池は、そのリチウムイオン電池を一部置き換える可能性を秘めた電池なんです。

 

理由の一つは「安さ」です。

 

ナトリウムというと塩(しお)を思い浮かべますよね。ご存じのとおり塩はいくらでもあります。海に膨大な量が溶けている(※注)。

 

つまり「安い」んですよ。

 

それに比べ、いま主流のリチウムはレアメタルなんて呼ばれているだけあって、取れる量が少ないので価格が高い(※注)。

 

でもなんでナトリウムがリチウムの代わりになるんでしょう?

 

そもそもナトリウムは電池になる……というか電池の元祖ですが(ボルタ電池)、その話は置いといて、元素の周期表を見てみましょう。

 

 

え、もう頭が痛い?

 

まあ、そうおっしゃらず、もうちょいお付き合いを(笑)。

 

リチウムとナトリウムは、周期表の一番左。アルカリ金属のところにいます。リチウムは原子番号3で、ナトリウムは11です。

 

周期表の縦軸は化学的特性が似ている「族」で並ぶように作られています。そう。つまりリチウムとナトリウムは化学特性がよく似ているのです。

 

でもなんでナトリウムが金属なの?

 

と、ふつー思いますよね。だって塩じゃん。

 

お気持ちはわかりますけど、金属なんだからしょーがない。

 

ウソじゃないですってば。見ますか? ナトリウムの本当の姿。

 

※Wikipediaより転載

 

これがナトリウムの正体です。

 

リチウムも似たような光沢を持つ金属物質なんです。(非常に酸化が早いので、よく理科室に置いてある灯油漬けのナトリウムは白っぽい錆びに覆われていて光沢はない)

 

じゃなんで、ナトリウムにしろリチウムにしろ、こういう「金属」のままで売ってないのか。

 

それはですねえ、ものすごく反応速度が速くて、めちゃくちゃ危険だからです。

 

どちらも金属状態だと、水に触れただけで激しく燃え上がります。いまの学校で実験するかわからないけど、ぼくは高校の物理(化学だったか?)の授業で、ナトリウムと水が反応する実験をやりました。マジで燃えます。それも火薬みたいに、バーッ! と激しく。しかも燃えた跡は、水酸化ナトリウムになるので、これまた危険な強アルカリの液体が残るという始末の悪さ。

 

リチウムはもっと反応が激しいはずです。めちゃめちゃ危険な物質を安全に使えるよう、頭のいい人たちが、さまざまな知恵を絞って、われわれはリチウムイオン電池を利用できていますが、それでもたまに発火して火事になったなんてニュースも聞きますよね。こわ〜っ。

 

で、ナトリウム。

 

最初に話した「安い」に加え、リチウムに比べれば、まだ扱いやすくて安全を担保しやすい。ですから、より安価に、より安全な二次電池を作ることができる……可能性があります。

 

まだ可能性ですよ。だって、やっと実用化されはじめたところですから、現段階(2025年3月)ではリチウムイオン電池より値段が高いです。一番のメリットを甘受できるのはまだ先です。

 

そしてもう一つ、大きな問題があります。

 

リチウムに比べて、電池が大きく重くなることです。

 

だって、原子番号3と11ですからね。そもそもリチウムより、ナトリウムは3倍以上重いんです。

 

これは「物理」なので、技術ではどうにもなりません。

 

なので残念ながら、すべてのリチウムイオン電池が、ナトリウムイオン電池に置き換わるということはなさそうです。カメラやスマートフォンなど小型機器には、引き続きリチウムイオンが使われるでしょう。

 

ではナトリウムイオンは、どういったところで使われるのでしょうか。

 

おそらく、家庭用の蓄電池とか、据え置いたまま使うのにナトリウムイオンは適しているのではないかと。家庭で使う電力を溜めるには、かなりの容量を必要としますから、リチウムイオンだと100万円を軽く超えちゃうところ、同じ容量で30万円とかになるなら、倍の大きさでも許せるんじゃない?

 

大きく重いのでクルマ用にも不向きですけど、リチウムより安全性が高いので採用する自動車メーカーはありそうです。とくに中国の自動車メーカーはすでに採用をはじめているとか。

 

そもそも中国のメーカーがナトリウムイオン電池の製造に積極的です。エレコムが採用したナトリウム電池も中国製です。日本もがんばって〜。

 

そろそろまとめましょう

 

リチウムは採掘が大変で、自然破壊を伴います。その点、ナトリウムは海から事実上無限に取れます(※注)。電池が重く大きくなる欠点も、使う用途や場所によっては気にならないので、安価に製造できるようになれば、すごく普及しそう。

 

さて、話を最初に戻して、エレコムのナトリウムイオンモバイルバッテリー。

 

世界初というだけ合って、JBRCの「小型充電式電池のリサイクル」の回収対象外です。普及していけば回収体勢が整っていくと思いますけど、いまのところ注意が必要です(エレコムでは自社で回収も考えているようです)。

 

あ、そうそう。リチウムイオン電池にくらべて、ナトリウムイオン電池は充放電回数が多いのも特徴なんです。リチウムイオンがどれも500回というところ、ナトリウムイオン電池は10倍の5000回充放電できるそうです。

 

さて、ぼくは買うのでしょうか?

 

すでにリチウムイオンのモバイルバッテリーを十分すぎるほど持っているから、さすがにすぐ必要ではないんですけど……まあ、そのうち買うでしょう(苦笑)。

 

買ったら、しばらく(1〜2ヶ月)使って、また使用レポートを書かせていただきます。

 

 

※注

文中の補足です。ナトリウムが海にたっぷりあるように、じつはリチウムも海にたっぷり溶け込んでいます。推定で海水中に2,300億トンあるとされています。地上の推定埋蔵量が1,400万トンといわれていますから、海から取れれば、事実上無限といえるほど。ですが海水1リットルで考えると、0.15グラムしか含まれていないので、効率よく回収できないのです。海からリチウムを取るには、まだまだコストがかかります。ちなみに塩化ナトリウムは、海水1リットルに34グラムくらい入ってるので、やっぱりナトリウムの量は桁違いですね。(宇宙規模で考えると、原子番号の小さいリチウムのほうが多いのでしょうけど)

 

 

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