一所懸命、新作を執筆しております。
なので!
じつは昨年末に、Mac用の電子辞書を新たに購入いたしました。
「大辞林」です。
大辞林は紙でも電子辞書でも持っていなかったので、これから楽しめそう。
辞書を楽しむってのも変だけど(苦笑)。
大辞林は中型国語辞典と呼ばれるだけあって、約25万の項目数。
新明解国語辞典が77,500ですから3倍以上。
読み応え……いえ、引き応えがあります。
ちなみに、中型国語事典と呼ばれているのは現在のところ――
『広辞苑』
『大辞林』
『大辞泉』
この3つだと思います。
この中でぼくは、和語と漢語に強い広辞苑が好きなんですが、物書堂さんのコンテンツにはないのです。最初残念と思いましたが、モノは考えようで、広辞苑はWindowsで引けるから、Macではべつの中型国語辞典を入れたほうがよかろうと。
選択は大辞林と大辞泉の二択。
結果、大辞林にしたのですが、その理由は改訂時期が2019年と新しかったから。
あと大辞林は「誤用」の説明が多いらしいので、ちょいと興味を惹かれました。
たとえば「失笑」を調べると、「あきれるあまり笑い声も出ない」は本来的には誤り。と出てますね。
ふむふむ。
でも「本来的には誤り」って、ちょっと弱気? 本来的じゃないときってあるの?
「誤用」は本当に厄介です。誤用する人があまりに多いと、いつしか「正しい用法」と認められることがあるからです。「それ誤用だよ」なんて鼻高々にうんちく垂れたあと、いまの時代は正しいとあとで知って恥かいたり(苦笑)。
その例を「煮詰まる」という動詞で見てみましょう。
この言葉は「長時間煮て水分がなくなる状態」と、それが転じて、「十分に議論して結論が出る状態」を意味するとされていました。しかし多くの人が、「会議が煮詰まって結論が出ない」というふうに誤用したんですね。かくいうぼくも(汗)。
ところが!
平成10年の「広辞苑 第5版」には、本来の意味しか載っていなかったのですが、10年後の平成20年、「広辞苑 第6版」の改訂で――
「転じて、議論や考えなどがこれ以上発展せず、行きづまる」も、正しい用法として載っているんですよ。
今回買った大辞林ではどうでしょう?
(3)時間が経過するばかりで、これ以上新たな展開が望めない状態になる
とあります。大辞林もいままで「誤用」とされていた用法を認めているのです!
ぼくらはもう、堂々と「煮詰まる」を誤用してよさそうです(笑)。
というのは簡単ですが、じつはこれすごくすごく厄介です。
文化庁月報・平成24年1月号(No.520)によると、平成19年度の「国語に関する世論調査」で、「七日間に及ぶ議論で、計画が煮詰まった」という文の意味を16歳以上の人たちに答えてもらったところ――
40歳を境に、若い世代は「行きづまって結論が出ない」と答える人が多く、年配の世代は「議論し尽くして結論が出る」と答える人が多かったそうです。
つまり、若い部下が上司に、議論の結論が出ないという意味で使っても、年配の上司は、結論が出る状態に達したと勘違いしちゃうわけですよね。口頭なら雰囲気でわかるでしょうけど、メールだと本当に誤解が生じるかも。
なにせ――
わが愛する新明解国語辞典(新解さん)では、まだ「誤り」とされていますからね。
ですが、中型辞典の広辞苑と大辞林が、誤用じゃないと書いてるんだから、新解さんの抵抗も長くは続かないかも(笑)。
というか、「煮詰まる」はいま、意味が逆転しているさなかの言葉と考えられます。行きづまるとして使う若い方々が社会の中心になったとき、本来の意味は消えていくのでしょう。
言葉は生き物ですからね。世代が変われば意味も変わる。
ということで、「誤用」にはこういうことが起こりがちです。気をつけなくちゃいけません。知ったかぶり。くわばらくわばら(苦笑)。
いやあ、辞書は楽しいですなあ!
こんなふうに辞書で遊び出すと、肝心の執筆が止まります。
手段と目的も逆転中(汗)。
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