ヒッチコック | TERUのブログ

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つれづれに

ヒッチコックといえば、いわずと知れたサスペンスの巨匠ですが、今日の話題は、そのヒッチコックを題材にした映画『ヒッチコック』(Hitchcock)です。

例によって、DVDになったので観てみました。

監督は、今作が長編デビュー作になるサーシャ・ガヴァシ。主演のヒッチコック役は、アンソニー・ポプキンス。物語で重要な役割を持つ、ヒッチコックの奥さんアルマ役は、ヘレン・ミレン。お二人とも名優でございます。

原作は、スティーヴン・レベロのノンフィクション本『アルフレッド・ヒッチコック&ザ・メイキング・オブ・サイコ』だそうですが(Wikipedia情報)、英語版しかないので、ぼくは読んでません。

この映画は、ヒッチコックの代表作である「サイコ」制作の舞台裏を描きつつ、ヒッチコックとアルマの人間関係にクローズアップした内容になっています。

最初に映画の感想を申し上げると……

おもしろい!

ぼくね、ヒッチコックの映画が大好きなんですよ。「サイコ」や「鳥」に代表されるホラータッチのサスペンスはもちろんですけど、特に「裏窓」が好きでねえ。以前にもブログに書いた記憶がありますが、何度も何度も繰り返し観ました。グレース・ケリーがお美しくていらっしゃるのも、何度も観たくなる理由のひとつではございますが(苦笑)、あの巧みなプロットと、映像ワークは、まさしく巧みのなせる技。アパートの裏窓から見える風景だけで、あれほどおもしろい映画を作ってしまうのは、天才じゃなきゃ出来ませんよ。

話がそれましたね(笑)。

で、そのヒッチコックが主人公のこの映画は、ヒッチコックの「人間性」に焦点を当てた、初めての映画じゃないでしょうか。「サイコ」は、当時としてはあまりにも猟奇的な内容なので、パラマウントが制作費を出してくれなくて、自宅を抵当に入れて、自己資金で撮影したそうです。それが、彼のキャリアの中で、最大のヒット作になったんだから、さすがとしかいいようがない。

でも、もし映画がこけたら、家は手放さなきゃいけないし、しばらく笑い者になるだろうしと、重圧に耐える姿も描かれていて、ヒッチコックといえど人の子なんだなあと、しみじみ思ってみたりして。

ヒッチコックは当時、すでに60才。名監督の名をほしいままにしていたのに、自宅を抵当に入れてまで、それまで撮ったことのない「新しい」ものを求めていた。その重圧に苦しむことになったとしても、新しい映画を撮りたかった。すごいですよねえ。頭が下がりますよ。だから「天才」なんでしょうけど。

ヒッチコックの撮った映画をすべて観てるわけじゃないですけど、彼の視点はつねに「観客」にあると思ってました。お客さんが驚く姿を見たい。お客さんが笑う姿を見たい。お客さんがよろこぶ姿を見たい。そのための映画を撮っていた気がします。エンターテナーはそうでなくちゃいけないと思うんです。

ところが、そんなヒッチコックをハリウッドは嫌っていて(映画の中のヒッチコックのセリフです)、結局彼にアカデミー賞を与えることはなかったのです。ヒッチコックは、ずっとアカデミー賞がほしかったそうですが、無冠の名監督という称号も、ヒッチコックには似合うような気がしますね。

ヒッチコック映画のお好きな方には、お勧めです。